「和歌史の断崖を埋める、近世(江戸時代)和歌の本当」第四回 賀茂真淵と古学の勃興

江戸時代の和歌革新に働いた人は多くいるでしょうが、それらの人々を代表する働きをした人は二人、すなわちひとりは「賀茂真淵」、ひとりは「香川景樹」です。この二人の仕事はいかにも際立っていて異論を挟む余地はないものでしょう。 ...

【百人一首の物語】四十四番「逢ふことの絶えてしなくはなかなかに人をも身をも恨みざらまし」(中納言朝忠)

四十四番「逢ふことの絶えてしなくはなかなかに人をも身をも恨みざらまし」(中納言朝忠) 朝忠は名のとおり“中納言”ということでかなりのお偉方。父は二十五番、三条右大臣定方であるので、なるほどこの世は血筋こそがものをいうとい...

「和歌史の断崖を埋める、近世(江戸時代)和歌の本当」第三回 和歌革新の契機

公家の手のうちのものとなって、今まさに滅びてしまおうとしていた和歌は、江戸時代に甦ります。それは誰あろう、武士という新階級の手によるものでした。 甦ったというのは和歌に新しい解釈を加え、新しい標準を立てて、これを新しい意...

【百人一首の物語】四十三番「逢ひ見てののちの心にくらぶれば昔はものを思はざりけり」(権中納言敦忠)

四十三番「逢ひ見てののちの心にくらぶれば昔はものを思はざりけり」(権中納言敦忠) 平安時代にホストがいたら、間違いなく彼がナンバーワンです。光源氏? 昔男こと在原業平? いえ違います、藤原敦忠です。 敦忠はかの時平の三男...

「和歌史の断崖を埋める、近世(江戸時代)和歌の本当」第二回 古今伝授という発明

定家の子孫は連綿として続くには続きましたが、何百年となく精神力の萎縮した状態でのみ生きてきたので、これはという人は出ませんでした。たまにはやや優れた人はあったようですが、祖先には比ぶべくもない程度の人でした。それらの人は...

「和歌史の断崖を埋める! 近世(江戸時代)和歌の本当」第一回 和歌の惨状

和歌というと万葉集の成った奈良時代から貴族文化華やかかりし平安時代、ちょっと足をつっこんで鎌倉時代のものばかりが語られますが、和歌史を俯瞰すれば江戸時代こそ際やかなる特色をもった時代であったことがわかります。 江戸時代と...

【百人一首の物語】四十二番「契りきなかたみに袖をしぼりつつ末の松山なみ越さじとは」(清原元輔)

四十二番「契りきなかたみに袖をしぼりつつ末の松山なみ越さじとは」(清原元輔) 詠み人の元輔は三十六番清原深養父の孫、六十二番清少納言の父です。梨壺の五人にも選ばれ、勅撰集にはなんと百首以上が採られていますから当代きっての...

【百人一首の物語】四十一番「恋すてふわが名はまだき立ちにけり人しれずこそ思ひ初めしか」(壬生忠見)

四十一番「恋すてふわが名はまだき立ちにけり人しれずこそ思ひ初めしか」(壬生忠見) (前歌より続く) 天徳内裏歌合のその最終二十番、兼盛と忠見の勝負の結末は… いずれも甲乙つけがたく判者(藤原実頼)は悩んだすえに「持」、引...

【百人一首の物語】四十番「しのぶれど色に出にけりわが恋は物や思ふと人の問ふまで」(平兼盛)

四十番「しのぶれど色に出にけりわが恋は物や思ふと人の問ふまで」(平兼盛) 兼盛と次の忠見の歌がいわくつきだということは、多くの人が知ところでしょう。この二首は「天徳内裏歌合」で番えられた歌です。天徳は村上天皇の御時、「後...

【百人一首の物語】三十九番 「浅茅生の小野の篠原しのぶれどあまりてなどか人の恋しき」(参議等)

三十九番 「浅茅生の小野の篠原しのぶれどあまりてなどか人の恋しき」(参議等) 前歌は女の「待つ恋」でしたが、ここからは三首、男の「しのぶ恋」が続きます。 参議等は源等、後撰集に数首の恋歌が採られていますが、そのことごとく...

【百人一首の物語】三十八番「忘らるる身をば思はず誓ひてし人の命の惜しくもあるかな」(右近)

三十八番「忘らるる身をば思はず誓ひてし人の命の惜しくもあるかな」(右近) この歌、引かれた拾遺集には「題しらず」となっていますが「大和物語」の八十四段に「女、男の忘れじとよろづのことをかけて誓ひけれど忘れにけるのちにいひ...

【百人一首の物語】三十七番「白露に風のふきしく秋の野はつらぬきとめぬ玉ぞちりける」(文屋朝康)

第三十七番「白露に風のふきしく秋の野はつらぬきとめぬ玉ぞちりける」(文屋朝康) 文屋朝康は六歌仙のひとり、文屋康秀の子です。ではありますが、詳しいことはあまりわからない謎の歌人。勅撰集には三首採られていますが、いずれも秋...

【百人一首の物語】三十六番「夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを雲のいづこに月やどるらむ」(清原深養父)

三十六番「夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを雲のいづこに月やどるらむ」(清原深養父) 古典和歌はつまらないという人に言わせると、その理由の最たるは「理知的だから」です。理知というと知識つまり掛詞や枕詞など言葉遊びや見立てや擬...

【百人一首の物語】三十五番「人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香ににほひける」(紀貫之)

三十五番「人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香ににほひける」(紀貫之) 貫之は古今集をいや古典和歌を代表する歌人のひとりですが、この「百人一首の物語」においては「没落氏族の逆襲」を代表する歌人です。 飛鳥・奈良時代に律...