【百人一首の物語】七十八番「淡路嶋かよふ千鳥の鳴く声にいく夜寝覚ぬ須磨の関守」(源兼昌)

七十八番「淡路嶋かよふ千鳥の鳴く声にいく夜寝覚ぬ須磨の関守」(源兼昌) 七十六番から崇徳院歌壇ゆかりの歌人が採られ、顕輔、堀川らへと続いてくのですが、その中ほどにこの源兼昌が置かれているのは、ちょっと理解に苦しむ配列です...

【百人一首の物語】七十七番「瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末にあはむとぞ思ふ」(崇徳院)

七十七番「瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末にあはむとぞ思ふ」(崇徳院) 平安末期の激動のそのど真ん中にいたのがこの崇徳院です。皇室、摂関家そして武家勢力入り乱れての内乱、「保元の乱(1156年)」で前の七十六番忠通...

【百人一首の物語】 七十六番「わたの原こぎ出でてみればひさかたの雲居にまがふ沖つ白波」(法性寺入道前関白太政大臣)

七十六番「わたの原こぎ出でてみればひさかたの雲居にまがふ沖つ白波」(法性寺入道前関白太政大臣) 定家とはじつに意地の悪い人間のようです。前の七十五番でご紹介した“あはれな男”の次に、その当事者たるボスの藤原忠通(法性寺入...

【百人一首の物語】七十五番「契りおきしさせもが露を命にてあはれ今年の秋もいぬめり」(藤原基俊)

七十五番「契りおきしさせもが露を命にてあはれ今年の秋もいぬめり」(藤原基俊) 暮れゆく秋のわびしそうな情景が詠まれていますが、実のところこれは「秋(四季)」ではなく「雑」の歌です。この歌を理解するためには、採られた千載集...

【百人一首の物語】七十四番「憂かりける人を初瀬の山おろしよはげしかれとは祈らぬものを」(源俊頼朝臣)

七十四番「憂かりける人を初瀬の山おろしよはげしかれとは祈らぬものを」(源俊頼朝臣) 源俊頼は七十一番の源経信を父に持ち、子に八十五番の俊恵がいます。百人一首に親子ペアは相当数(18組)ありますが、親、子、孫と三代で採られ...

【百人一首の物語】七十三番「高砂の尾の上の桜さきにけり外山の霞たたずもあらなん」(前権中納言匡房)

七十三番「高砂の尾の上の桜さきにけり外山の霞たたずもあらなん」(前権中納言匡房)  「遠くの山に桜が咲いた、近くの山の霞よどうか立たないでおくれ」。 遠景の山の桜と近景の霞を対照させたいわゆる長高い歌、和歌らしい模範的な...

【百人一首の物語】 七十二番「音に聞く高師の浜のあだ波はかけじや袖のぬれもこそすれ」(祐子内親王家紀伊)

七十二番「音に聞く高師の浜のあだ波はかけじや袖のぬれもこそすれ」(祐子内親王家紀伊) 詠み人は祐子内親王家紀伊、名前の冠が長いほど偉いのが男性でしたが、女房の場合はたんに所属が記されているだけです。ただ前代までは清少納言...

【百人一首の物語】七十一番「夕されば門田の稲葉おとづれて芦のまろ屋に秋風ぞふく」(大納言経信)

七十一番「夕されば門田の稲葉おとづれて芦のまろ屋に秋風ぞふく」(大納言経信) 前の七十番に続いて「秋の夕暮れ」の情景です、しかも同じく美しくて寂しい秋の夕暮れです。 「夕方になると門田の稲葉がそよそよと音を立てて、ああ、...

【百人一首の物語】七十番「さびしさに宿を立ち出でてながむればいづこも同じ秋の夕暮れ」(良暹法師)

七十番「さびしさに宿を立ち出でてながむればいづこも同じ秋の夕暮れ」(良暹法師) 詠み人の良暹法師ですが、詳しい出自や経歴がわからない、いわゆる“正体不明歌人”です。猿丸太夫や蝉丸など百人一首の前半にはこういった人たちをチ...

現代短歌の機能不全、「文語的世界」の崩壊

現代短歌と古典和歌との違いを考えるとき、題とか韻律とかさまざまな要点が考えられますが、根本的には「現実性」の違いにあると思います。和歌はいうなれば「虚構の文学」で、男が女にもなればその逆も自然にあって、大貴族が貧しい農民...

【百人一首の物語】六十九番「嵐吹く三室の山のもみぢ葉は竜田の川の錦なりけり」能因法師

六十九番「嵐吹く三室の山のもみぢ葉は竜田の川の錦なりけり」能因法師 百人一首には十番の蝉丸も勘定に入れると、坊主が十三人採られています。一口に坊主といってもいろんな人がいて、かつての大貴族が出家してそのまま大僧正とか偉い...

【百人一首の物語】六十八番「心にもあらでこの世にながらへば恋しかるべき夜半の月かな」(三条院)

六十八番「心にもあらでこの世にながらへば恋しかるべき夜半の月かな」(三条院) 和歌と現代短歌の違いの最たるは、「リアリティ」というところにあると思います。現代短歌は「我」が生きる生の実感をえぐるように吐き出したところに、...

【百人一首の物語】六十七番「春の夜の夢ばかりなる手枕にかひなくたたむ名こそ惜しけれ」(周防内侍)

六十七番「春の夜の夢ばかりなる手枕にかひなくたたむ名こそ惜しけれ」(周防内侍) 張りつめていた空気があれよと解けるおもしろさ、いいも悪いも百人一首の配列は妙技です。 歌ですが千載集の詞書にはこうあります。二月の月の明るい...

【百人一首の物語】六十六番「もろともにあはれと思へ山桜花よりほかに知る人もなし」前大僧正行尊

六十六番「もろともにあはれと思へ山桜花よりほかに知る人もなし」前大僧正行尊 中世文学の重要なキーワードに「漂白の歌人」というものがあると思いますが、それを形作ったのが行尊です。行尊は祖父に三条院をもち、父基平は参議に昇る...