【百人一首の物語】五十番「君がため惜しからざりし命さへ長くもがなと思ひぬるかな」(藤原義孝)

五十番「君がため惜しからざりし命さへ長くもがなと思ひぬるかな」(藤原義孝) 恋の歌が続きます、よみ人は藤原義孝。この歌で百人一首も前半終了ですが、後半は藤原氏以外の氏族はほとんど出てきません、ようするに駆逐、埋没しちゃっ...

【百人一首の物語】四十九番「みかきもり衛士のたく火の夜はもえ昼は消えつつものをこそ思へ」(大中臣能宣朝臣)

四十九番「みかきもり衛士のたく火の夜はもえ昼は消えつつものをこそ思へ」(大中臣能宣朝臣) よみ人は大中臣能宣、梨壺の五人の一人であった人物です。と、ここで解説を、まず「大中臣」ですが、なんか見覚えありますよね? 藤原氏の...

【百人一首の物語】四十八番「風をいたみ岩うつ波のおのれのみくだけてものを思ふ頃かな」(源重之)

四十八番「風をいたみ岩うつ波のおのれのみくだけてものを思ふ頃かな」(源重之) 源重之は風景歌の達者です。その詠みぶりは平安の山部赤人といって過言でなく、この時代にはめずらしく大らかで親しみやすい景色を歌に多く残しました。...

【百人一首の物語】四十七番「八重葎しげれる宿のさびしきに人こそ見えね秋は来にけり」(恵慶法師)

四十七番「八重葎しげれる宿のさびしきに人こそ見えね秋は来にけり」(恵慶法師) 五番の猿丸太夫は「秋は悲し」とうたい、四十七番の恵慶法師は秋を「さびし」とうたった。私たちも秋といえばなんとなく物悲しい「愁い」の季節だと理解...

【百人一首の物語】四十六番「由良の門を渡る舟人かぢをたえゆくへも知らぬ恋の道かな」(曽禰好忠)

四十六番「由良の門を渡る舟人かぢをたえゆくへも知らぬ恋の道かな」(曽禰好忠) 「ギャップ萌え」はわりとあることですよね。たとえば人前では辛く当たるのに、二人きりになると甘えてくる恋人とか、ツンデレですね。ではこんなギャッ...

【百人一首の物語】四十五番「あはれともいふべき人は思ほえで身のいたづらになりぬべきかな」(謙徳公)

四十五番「あはれともいふべき人は思ほえで身のいたづらになりぬべきかな」(謙徳公)    「謙徳公」というのはいわゆる諡号です。貴人が死後、生前の行いを尊んで贈られた名前ですから、よほどのエリートだと思いましたが、なるほど...

【百人一首の物語】四十四番「逢ふことの絶えてしなくはなかなかに人をも身をも恨みざらまし」(中納言朝忠)

四十四番「逢ふことの絶えてしなくはなかなかに人をも身をも恨みざらまし」(中納言朝忠) 朝忠は名のとおり“中納言”ということでかなりのお偉方。父は二十五番、三条右大臣定方であるので、なるほどこの世は血筋こそがものをいうとい...

【百人一首の物語】四十三番「逢ひ見てののちの心にくらぶれば昔はものを思はざりけり」(権中納言敦忠)

四十三番「逢ひ見てののちの心にくらぶれば昔はものを思はざりけり」(権中納言敦忠) 平安時代にホストがいたら、間違いなく彼がナンバーワンです。光源氏? 昔男こと在原業平? いえ違います、藤原敦忠です。 敦忠はかの時平の三男...

【百人一首の物語】四十二番「契りきなかたみに袖をしぼりつつ末の松山なみ越さじとは」(清原元輔)

四十二番「契りきなかたみに袖をしぼりつつ末の松山なみ越さじとは」(清原元輔) 詠み人の元輔は三十六番清原深養父の孫、六十二番清少納言の父です。梨壺の五人にも選ばれ、勅撰集にはなんと百首以上が採られていますから当代きっての...

【百人一首の物語】四十一番「恋すてふわが名はまだき立ちにけり人しれずこそ思ひ初めしか」(壬生忠見)

四十一番「恋すてふわが名はまだき立ちにけり人しれずこそ思ひ初めしか」(壬生忠見) (前歌より続く) 天徳内裏歌合のその最終二十番、兼盛と忠見の勝負の結末は… いずれも甲乙つけがたく判者(藤原実頼)は悩んだすえに「持」、引...

【百人一首の物語】四十番「しのぶれど色に出にけりわが恋は物や思ふと人の問ふまで」(平兼盛)

四十番「しのぶれど色に出にけりわが恋は物や思ふと人の問ふまで」(平兼盛) 兼盛と次の忠見の歌がいわくつきだということは、多くの人が知ところでしょう。この二首は「天徳内裏歌合」で番えられた歌です。天徳は村上天皇の御時、「後...

【百人一首の物語】三十九番 「浅茅生の小野の篠原しのぶれどあまりてなどか人の恋しき」(参議等)

三十九番 「浅茅生の小野の篠原しのぶれどあまりてなどか人の恋しき」(参議等) 前歌は女の「待つ恋」でしたが、ここからは三首、男の「しのぶ恋」が続きます。 参議等は源等、後撰集に数首の恋歌が採られていますが、そのことごとく...

【百人一首の物語】三十八番「忘らるる身をば思はず誓ひてし人の命の惜しくもあるかな」(右近)

三十八番「忘らるる身をば思はず誓ひてし人の命の惜しくもあるかな」(右近) この歌、引かれた拾遺集には「題しらず」となっていますが「大和物語」の八十四段に「女、男の忘れじとよろづのことをかけて誓ひけれど忘れにけるのちにいひ...

【百人一首の物語】三十七番「白露に風のふきしく秋の野はつらぬきとめぬ玉ぞちりける」(文屋朝康)

第三十七番「白露に風のふきしく秋の野はつらぬきとめぬ玉ぞちりける」(文屋朝康) 文屋朝康は六歌仙のひとり、文屋康秀の子です。ではありますが、詳しいことはあまりわからない謎の歌人。勅撰集には三首採られていますが、いずれも秋...