待ちかねて訪ねざりせばホトトギスだれとか山のかひになかまし(源俊頼)

この度やむなくホトトギスを片仮名表記にしている。古今集最古の写本とされる高野切れなどは全て平仮名(変体仮名含む)で和歌を書写しているが、私は可読性を優先して要所で漢字を用いている。ホトトギスもそうしたかったのだが、これを...

我がためと聞きやなさましホトトギスぬし定まらぬ己が初音を(冷泉為相)

『私のためと聞いてもいいだろうか? まだ主が定まらないホトトギスの初音を』。初音といえばミクではなくて「鶯(うぐいす)」であるとご紹介したが、まあこのようにホトトギスに使っても構わない。鳥であれ花であれ風であれ! 時節の...

うちしめり菖蒲ぞ香るほととぎす鳴くや皐月の雨の夕暮れ(藤原良経)

昨日に続いて良経の菖蒲である。そしてこれこそ後京極摂政良経、渾身の一首である。 まず詞(ことば)、二句で切れて三句目で場面を転換、間髪入れずに四句目を倒置している。かつ結句を上下両方の情景に関係させ一首を統合、巧みな構成...

忘れめや葵を草にひき結びかりねの野辺の露のあけぼの(式子内親王)

昨日までの葵歌でこれが「逢う日」に掛かり、また御神紋である「賀茂神社」と縁が深いことがお分かり頂けただろう。ところで賀茂神社といえば、和歌ファンであれば彼女を思い起こさずにいられない、式子内親王だ。 式子は十代の多感な時...

古へのあふひとびとは咎むともなほそのかみの今日ぞ忘れぬ(藤原実方)

昨日ご紹介したように「葵」は大抵「逢う日」と掛けられる、ゆえにその歌は恋になる傾向が高い。今日も恋の部から、出展は新古今和歌集である。『前に関係した女どもは怒るかもしれんなぁ、でも昔の祭りで出会った女、あいつはまじで別格...

神祀る宿の卯の花しろたへの御手座かとぞあやまたれける(紀貫之)

今日の詠み人は紀貫之、十八番の見立てであるが少し分かりづらい。それは卯の花に見立てた「御手座」にある。御手座は「みてぐら」と読み神前に供える布・切地を指す、「幣(ぬさ)」と言い換えた方がイメージしやすいかもしれない。この...

まがふべき月なきころの卯の花は夜さへさらす布かとぞ見る(西行)

昨日の卯の花は夕月夜、ほのかな明かりが残っていた。それが新月であったらどうであろう? 今日の詠み人は西行法師、旅の詩人は夜さへ構わず風雅を求め野山を巡る。もとより人工的な灯りなどない射干玉の闇、月がなければ足取りも止む。...

夕月夜ほのめく影も卯の花の咲けるわたりはさやけかりけり(三条実房)

和歌では白さを讃える場合、同じく白きものと合わせて相乗効果を得るか、夜の闇にあって際立つ様を詠むことが多い。前者は「白菊に置く霜」などが知られるだろう、今日の歌は後者に近い場面でその美しさが詠まれている。 光と闇が交代す...