神祀る宿の卯の花しろたへの御手座かとぞあやまたれける(紀貫之)

今日の詠み人は紀貫之、十八番の見立てであるが少し分かりづらい。それは卯の花に見立てた「御手座」にある。御手座は「みてぐら」と読み神前に供える布・切地を指す、「幣(ぬさ)」と言い換えた方がイメージしやすいかもしれない。この潔白を卯の花に譬えたのだ。紅葉を幣に見立てる歌もあるが四季歌ではなかなか珍しい類だ。それは卯の花が神事と関係することに故する。卯の花はただしく「ウツギ」と称するが、これが「打木」を連想させるのだ。住吉大社では「卯之葉神事」といって、卯の葉を使った玉串を捧げて創立記念日を祝う。
現代では珍しくもなんともないが、平安歌人にとって「白い花」は貴重でありもっとも敬愛すべきものだった。春のそれは「桜」であり、夏と秋は「卯の花」と「萩」そして冬は「雪」がそれを担う。

(日めくりめく一首)

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