夕月夜ほのめく影も卯の花の咲けるわたりはさやけかりけり(三条実房)

和歌では白さを讃える場合、同じく白きものと合わせて相乗効果を得るか、夜の闇にあって際立つ様を詠むことが多い。前者は「白菊に置く霜」などが知られるだろう、今日の歌は後者に近い場面でその美しさが詠まれている。
光と闇が交代する夕月夜、その瞬間にひとつ際立って光るものがある、それこそが卯の花であった。結句の「さやけかりけり」は少々説明が過ぎないこともないが、心の吐露であればやむを得ない。今回も採られた千載集らしく声調一流である。

(日めくりめく一首)

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