風わたる田の面の早苗いろさめて入り日残れる丘の松原(光厳院)

『爽やかな風吹きわたり青い早苗がなびく田んぼ、その色は少しずつ落ちていって、夕日が僅かに残る丘の松林』。まるで写真を見るかのような情景繊細な初夏の田園。一目で玉葉・風雅の撰と分かる、見事な写生歌である。
早苗などの田園の風景が盛んに詠まれるようになったのは新しく、だいたい玉葉集あたりからだ。色彩にほとんどの感覚を働かせた京極派が、これを初夏の文学に発見したのである。
京極派は為兼、そして伏見院とその妃永福門院によって起こるが、今日の詠み人光厳院はその伏見院の孫にあたる。彼は持明院統を引き継ぐとともに京極歌風も見事に継承したのだ。「風雅和歌集」は彼と叔父花園院とが深く関り完成させる、光厳院とはまさに風雅の人であった。しかし歴史には恵まれず、北朝の初代天皇となったが、歴代126代天皇には数えられない。

(日めくりめく一首)

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