秋のうちはあはれ知らせし風の音のはげしさ添ふる冬はきにけり(藤原教長)

秋を知らせる風は「はっと気づく」というような繊細なものであったが、冬の風はまったくそうでない。『秋の頃は深い情趣を感じさせた風の音が激しくなって、冬が来たんだなぁ』。ビュービュー叩き付けるような激しい風はまるで嵐、嘘のよ...

【和歌マニア(第94回)】再び怪人「ワカマーニ」! 大中臣能宣の歌の謎を解け!!

またまた現れた怪人「ワカマーニ」! 執拗にろっこ達に挑んでくるワカマーニ、お前の目的はいったいなんなんだ!? 今回も百人一首から大中臣能宣の「御垣守…」からの出題、あなたはこの謎が解けるか!? 和歌の型(基礎)を学び、詠...

風の音に秋の夜ふかく寝覚して見果てぬ夢の名残をぞ思ふ(平忠度)

いわゆる「雑」の類であるが暮秋の心を深く感じる歌をご紹介しよう、「忠度集」から平忠度の一首である。『秋も暮れようとする夜、冷え冷えとする風の音に目が覚めて、未だ果たせぬ夢を思い病む』。詞書きには「閨冷夢驚」(閨の冷たさに...

目もかれず見つつ暮さむ白菊の花よりのちの花しなければ(伊勢大輔)

『飽きることなく見続けていよう、白菊の花より後に花はないのだから』。早春の「梅」に始まる和歌の花は、晩秋の「菊」で締めくくりとなる。和歌に詠まれる花において、白菊は唯一色褪せた様さえも愛でられる。それは変容する紫が美しい...

ももしきや我が九重の秋の菊こころのままに折て挿頭さむ(後醍醐院)

菊は四君子のひとつに数えられ、中国のみならず本朝でも格別に愛好された。重陽の節句では花を飾り、また花びらを浮かべた酒を飲んで邪気払いと長寿を祈願する。今日の歌もそんな風習を下地に詠まれたものだろう。ただ「挿頭す」という一...

ひさかたの雲の上にて見る菊は天つ星とぞあやまたれける(藤原敏行)

『雲の上に見る菊は、おっと夜空の星と間違えちゃった』、小学三年生でも詠めそうな歌である。詠み人は藤原敏行、前評判通り工夫がない。ただ経緯を知れば、同情の余地がないこともない。詞書にはこうある、「殿上許されざりける時に召し...

【和歌マニア(第93回)】★和歌で星よみ★ 第9回「山羊座」

ろっこが十二星座にピッタリの歌人を月イチで紹介する和歌で星よみ! 今回は山羊座です。ストイックな上に職人魂に燃える歌人と言えば、、やはり西行でしょう。歌道に専念するため世を捨てた西行がたどり着いた境地とは!? 和歌の型(...

霜をまつ籬の菊の宵のまに置きまよふ色は山の端の月(後鳥羽院宮内卿)

「籬(まがき)の菊」は日本美術におけるひとつの定型であり、絵画や着物の柄の図案として好んで描かれた。また「菊に置く霜」も躬恒に倣った趣向で和歌における菊の王道的詠み方といえよう。しかし出来上がった歌からは全く新しい体験が...

心あてに折らばや折らむ初霜の置きまどはせる白菊の花(凡河内躬恒)

百人一首には撰者の審美眼を疑う歌も散見されるが、今日の一首は間違いなく凡河内躬恒の渾身の作品だ。『当て推量で手折ってみようか、初霜が置いて見分けがつかなくなった白菊の花よ』、霜がびっしりと付いていっそう際立つ白菊の美しさ...

明石潟うらぢ晴れゆく朝凪に霧に漕ぎいる海人の釣船(後鳥羽院)

源氏物語以後、須磨そして明石と言えば屛居の地としてイメージが決定的となり、歌にも詫びれた情景が多く詠まれるようになった。『明石潟の浦べの道から、朝凪の霧に漕ぎ入る漁師の釣り船が見える』、主観的な感情を全く廃して純写生とい...