風の音に秋の夜ふかく寝覚して見果てぬ夢の名残をぞ思ふ(平忠度)

いわゆる「雑」の類であるが暮秋の心を深く感じる歌をご紹介しよう、「忠度集」から平忠度の一首である。『秋も暮れようとする夜、冷え冷えとする風の音に目が覚めて、未だ果たせぬ夢を思い病む』。詞書きには「閨冷夢驚」(閨の冷たさに夢から醒める)とあるが、平家物語の読者としては寝覚めの原因を「見果てぬ夢」に探るだろう。「前途程遠し、思ひを雁山の夕べの雲に馳す」は、忠度都落における絶唱であった。はたして忠度の一途な夢、思いとはいったい何であったか、平家の永遠なる隆盛か? 違う、師である俊成に契ったのは、歌人としての本分の達成である。 

(日めくりめく一首)

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