ひさかたの雲の上にて見る菊は天つ星とぞあやまたれける(藤原敏行)

『雲の上に見る菊は、おっと夜空の星と間違えちゃった』、小学三年生でも詠めそうな歌である。詠み人は藤原敏行、前評判通り工夫がない。ただ経緯を知れば、同情の余地がないこともない。詞書にはこうある、「殿上許されざりける時に召し上げられて仕う奉れる」、ということで精いっぱいのおべっかを使う必要があったのだ。歴史的には後鳥羽院がことさらに愛好して以来、「菊」は皇室のご紋(十六葉八重表菊)として定着していくのだが、すでに寛平御時(平安前期)において、主上に見立て讃える存在として菊は後光を放っていたのだろう。

(日めくりめく一首)

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