古今伝授と茶飲み連歌会(師走の巻)


これまで幾度の「わくわく和歌ワークショップ」をつうじて気づいたことがあります。
それはお集まりいただく方々が一様に「数寄者」だということ、
そして同時に現代には「数寄を楽しむ場がない」ということです。

「茶道」やその他芸事なんてのは現代でも至る所に体験できる場所があります。
しかし、これらは稽古のための稽古を繰り返すばかりで、
本当にで「数寄」を楽しめる場ではないのではないでしょうか?

非常にもったいない!
私は数寄者が心から楽しめる場所をつくりたいと思います。

業平に西行、利休に芭蕉。
私に彼らのような才能はなくとも、憧れだけは尽きることがありません。
さあみなさん、私と一緒に歌を愛し数寄者の道、風雅の誠を探求しましょう!
※私が考える数寄者とは、歌や文学など「古典文化」に憧憬を抱き、時には現実から離れてその道に没頭する人です

〇開催日:12/24(日)10:00~12:10 ※毎月第3or4日曜に開催
 ※申込締切:12/20
〇初回体験費:2,000円(税込)
〇参加費(1回):3,000円(税込)
〇開催場所:東京メトロ銀座駅徒歩5分 ※お申込み頂き次第、会場の詳細を返信いたします

詳細、お申し込みはこちら
→「平成29年 秋の大文化祭☆開催レポート

「妄想女子の恋歌日記」~恋飽きられる11月の巻~

●11月某日
学校からの帰り道。

家の近くのあぜ道なら誰にも見られないって、
初めて手をつないだ夏の日。
ずっとずっと、一緒にいられると思ってた。

秋風が吹き付ける。
あぜ道を行くのは私一人。

田の実と、彼を頼みにしていた私に
秋風が冷たく冷たく吹き付ける

あ~あ、
やっぱり一人になっちゃった。

822 「秋風に あふたのみこそ 悲しけれ わが身むなしく なりぬと思へば」(小野小町)

●11月某日
足元に目をやると
葛の葉が風になびいている。

冷たい秋の風は、
その葉を吹き返して裏を見せている

それを見るたび、
恋の恨みも募ってくる

わたし悪くなかったよね?
彼を恨んだっていいよね?

823 「秋風の 吹きうらかへす 葛の葉の 裏見てもなほ 恨めしきかな」(平貞文)

●11月某日
裏切ったのは彼
でも… まだどこかで信じられない

確かに女にモテて、調子いいトコもあったけど
ウソをついたりする人じゃなかった

秋風はますます強く吹き付ける。
武蔵野の草葉はあたり一面、秋の色に変わってしまった。

彼の心も私に飽きて、
すっかり変っちゃったんだろうね。

821 「秋風の 吹きと吹きぬる 武蔵野は なべて草葉の 色かはりけり」(よみ人しらず)

つづく…
(書き手:和歌DJうっちー)

「妄想女子の恋歌日記」一覧

平成29年「秋の大文化祭☆」開催レポート

去る平成29年11月19日、平成和歌所による初のこころみ「秋の大文化祭」が開催されました!
立冬を過ぎても秋とはご愛敬ということで…

場所は大田区池上の古民家。
目と鼻の先には「池上本門寺」がございます。
池上本門寺は日蓮宗の大本山、立派な「仁王門」が出迎えてくれます。

大堂と本殿の間には「紅葉坂」という素敵な名前の坂がありました。
が、紅葉らしい木々は見当たらず…

この池上の「紅葉坂」をヒントに、今回の連歌の脇句を付けました。
【発句】ちはやふる 神代もきかず 竜田川(在原業平)
【脇句】水なき池に 錦ぞ上る(うっちー)
※句中に開催地の「池上」を詠みこみ、その紅葉坂を錦(この場合は錦鯉)が上る、神代にも聞いたことがないなぁ、というような感じです

「此経難持坂」の上から見下ろす池上の町。
ここから徒歩数分で、今回の会場があります。

こちらが今回の会場「古民家カフェ 蓮月」。
昭和の雰囲気が色濃く残る、立派な建物。中は意外と!? 広かったです。

今回の「秋の大文化祭」は13時から17時までの4時間!
毎月の定番の「古今伝授(秋の夕暮れ)」と「連歌」を組み入れつつ、
ご参加の方に手練れの技をご披露頂く「異文化交流」を行いました。

初めての試みでしたが、総勢15名の数寄者にお集まりいただきました。
ご参加の方のほとんどが着物、ちなみに私は着物を着てくださいなんて一言も言っておりません(笑

異文化交流では、まず初めに「刀剣」をご紹介いただきました。
これらはすべて普段の稽古で使われているそうです。
その佇まいは武士そのもの…
私も帯刀させていただき、侍気分を満喫しました。

次いで「キモノさーくる 華会」で着付けの先生をされている「おと」様による帯結びの披露。
本当にあっという間に、華やかな帯を結ばれていました。
結び方ひとつで、着物の印象はぐっと変わりますね。

続いては「能」と能で歌われる唄について。
能は日本文化の中でも難易度が高くとっつきにくい印象がありましたが、
それを払しょくするような面白いお話をいただきました。
みなさん、和歌と能の関係はかなり深いですよ!

最後は日本舞踊です。ということはもちろん「ろっこさん」の登場です。
踊りの前に、「袖による感情表現」のお話をしてもらいました。
和歌でも袖は涙と縁を持ち頻繁に歌われますが、踊りでは和歌以上の表現のバリエーションがあり驚きました。
袖は口ほどにものをいう、という感じです。

今回は「紅葉の橋」という季節にぴったりの踊りを披露していただきました。
こんなに間近で見られて感激です!

さて、最後は恒例の「連歌会」です。
初めての方も沢山いらっしゃいましたが、みなさん「楽しく」そして「真剣」に詠じられいました。
※この時の連歌作品は、改めて披露させていただきます

盛りだくさんの内容に、みなさんも熱がこもり時間を延長する結果に。
楽しく和気あいあいと日本文化の交流ができました。
普段、家元制度の狭い世界に閉じこもっていると、こんな体験はなかなか出来ないかもしれません。
そんなことが出来るのは、日本文化の礎「和歌」を自由にエンターテイメントする平成和歌所ならではです。

通常のワークショップ(古今伝授+連歌会)は毎月第四日曜に開催中。
次回の大文化祭は半年後、「春の大文化祭」を企画中です!
ぜひみなさま、お気軽にご参加ください。
→「わくわく和歌ワークショップ

平成和歌所 和歌DJうっちー

【和歌マニア(第48回)】秋のバイプレーヤー「露」!

今回のテーマは「露」! 露は秋の主役(紅葉、萩)たちの添え物にしかすぎませんが、歌になくてはならない重要な存在なのです。宝石にもなる露の美しさをご紹介しましょう。着物生活チャレンジ中の吉三さんの面白話もあるよ。

♪放送で紹介した和歌
222「萩の露 玉に抜かむと とれば消ぬ よし見む人は 枝ながら見よ」(よみ人しらず)
223「折りて見ば 落ちぞしぬべき 秋萩の 枝もたわわに おける白露」(よみ人しらず)
27「浅緑 糸よりかけて 白露を 玉にも抜ける 春の柳か」(僧正遍昭)
225「秋の野に おく白露は 玉なれや 貫きかくる 蜘蛛の糸すぢ」(文屋朝康)
257「白露の 色はひとつを いかにして 秋の木の葉を 千々に染むらむ」(藤原敏行)
258「秋の夜の 露をは露と おきながら 雁の涙や 野辺を染むらむ」(壬生忠峯)
574「夢路にも 露や置くらむ よもすがら 通へる袖の ひぢてかわかぬ」(紀貫之)
589「露ならぬ 心を花に 置きそめて 風吹くごとに 物思ひぞつく」(紀貫之)
757「秋ならで おく白露は 寝ざめする 我がた枕の 雫なりけり」(よみ人しらず)

集まれ数寄者! 「秋の大文化祭」開催のお知らせ


やってきました秋の大文化祭!
毎月恒例の和歌ワークショップ&連歌会はもちろん、
ご参加の皆様にも手練れの技をご披露いただき、日本の異文化交流を行います!

場所は池上本門寺目の前の風情ある古民家。
時間はいつもの倍、4時間を予定しています。

心づくしの秋。風流な遊びに興じてみませんか。
※12月は通常の「はじめての古今伝授と歌会」となります

【開催内容】
〇古今伝授(和歌の解釈):「秋の夕暮れ」
 ※その他:和歌の修辞法、和歌の文法、奥の細道鑑賞
〇連歌(式目)※分からなくても楽しめます!
 ・発、脇句:当季の脇起り
 ・定座:月(5句、14句、29句)、花(17句、35句)※正花に限らず当季の花を自由に詠みます
 ・句数去嫌:四季、恋、同字以外は大らかにいきましょう
 ・形式:半歌仙(18句)を巻きます
〇異文化交流
 企画中(和歌×書、和歌×刀剣、和歌×日舞、和歌×和装…)

【開催場所、参加料】
〇開催日:11/19(日)13:00~17:00 ※申込締切:11/15
〇参加料:4,000円(税込)※初めの方:3,000円(税込)
〇開催場所:東急池上線 池上駅 徒歩8分 ※お申込み頂き次第、会場の詳細を返信いたします

→「ワークショップの詳細、お申込みはこちら

「妄想女子の恋歌日記」~恋待ちきれぬ10月の巻~

●10月10日

あの有明の朝から
彼とはほとんど会ってない

今日も友達と予定があるとかって
みじかいLINEが来た

彼はこんな一文で済ませてくるけど
私はもっともっと話がしたい
こんなに好きだってこと、全力で伝えたい
会えばきっと、私のこと分かってくれるはずだから

小萩に置いた露が重たくて
それを払ってくれる風を待つように

私も彼からの連絡をひたすら待ってる

694「宮城野の もとあらの小萩 露をおもみ 風を待つごと 君をこそまて」(よみ人しらず)

●10月25日

もう限界!
このままずっと待ってるだけなんてできない

私に足りないのは行動力
嫌われたっていい
彼の気持ちが知りたいの

だから、
いつかみたいに「来ちゃった」ってやつ
リベンジしてみたんだけど、
やっぱ無理かな…

ううん、今回は部屋の灯りはついてるの
でもいざとなると、ドアをノックできない
何にビビってんだろ私、、

あ~
初雁が鳴いて通り過ぎるように
私が何度も何度も、家の周りを行ったり来たりしてんの
彼に知らせてやりたい!

735「思ひいてで 恋しき時は 初雁の なきてわたると 人しるらめや」(大伴黒主)

●10月25日

私ずっと、彼のこと一途に思ってた
内緒で付き合おうっていうから
それを真に受けて、誰にも言わないでいた

それがなによアイツ
別の女しっかり連れ込んでイチャついてんじゃん
窓越しに、私はっきり見たわ

ほんとバカ
なんなのよ
とにかく最悪

今はもう、何も考えられない

748「花すすき 我こそしたに 思ひしか 穂に出でて人に 結ばれにけり」(藤原仲平)

つづく…
(書き手:和歌DJうっちー)

「妄想女子の恋歌日記」一覧

この記事の音声配信「第47回 妄想女子の恋歌日記(恋待ち切れぬ10月)の巻)」を
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僧正遍照 ~仏の道は恋の道? 笑いを誘うエロ坊主~


「平安時代のお坊さん」というと、どんなイメージを描きますか?

五つの「心願」を立て、それが叶うまで山を下りないと誓い、後に天台宗の開祖となった「最澄」。
→「天台宗の歴史

「往生要集」を起こし、浄土教の思想の礎のみならず文学思想へも多大な影響を与えた「源信」。
既存の仏教集団に迫害され流罪となっても専修念仏を貫いた浄土宗の祖「法然」。

例えば彼らには、衆生をくまなく救おうという敬虔で立派なお坊さん像を抱かされます。

がしかし!
和歌に登場するお坊さんで、こんな方は皆無です。

百人一首の歌を見てください。
そこには13人のお坊さんが名を連ねていらっしゃいますが、
いわゆる「立派なお坊さん」らしいのはこの方ひとり。

「おほけなく うき世の民に おほふかな わがたつ杣に 墨染の袖」(前大僧正慈円)
身のほどもわきまえず、比叡の山に住みはじめた私の墨染めの袖(僧衣)で浮世の民を守ってやりたい。

多くは自らの隠遁生活の寂しさを嘆くのみ…
「八重むぐら しげれる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋は来にけり」(恵慶法師)
「さびしさに 宿を立ち出でて ながむれば いづくもおなじ 秋の夕ぐれ」(良選法師)

あまつさえ色恋にうつつを抜かしている坊主だっているのです。
「今こむと いひしばかりに 長月の 有明の月を まちいでつるかな」(素性法師)
「夜もすがら 物思ふころは 明けやらで 閨のひまさへ つれなかりけり」(俊恵法師)

しかもそれが女になりきった、艶のあるいい恋歌…
現代の感覚で言ったら不謹慎な「生臭坊主!」なんて言われかねませんね。

この生臭の筆頭が、だれあろう今回の主役「僧正遍照」です。

遍照は六歌仙および三十六歌仙に挙げられる名うての歌人。同じく三十六歌仙の素性法師は彼の息子です。
祖父は桓武天皇という高貴な出自、俗名は良岑宗貞(よしみねのむねさだ)といい、
恩顧を受けた仁明天皇が亡くなったのを機に出家しました。

ちなみに僧正遍照の「僧正」とは、僧綱という僧官の最上位つまり僧ランクNO.1を意味します。
地位は立派なのですが、歌を見る限りとてもそうは思えないというのが僧正遍照なのです。

ということで、今回は僧正遍照の歌を鑑賞してみましょう。

僧正遍照の十首

一「あまつ風 雲のかよひ路 吹きとぢよ 乙女の姿 しはしとどめむ」(僧正遍照)
遍照と言えばこの歌「あまつ風」ですよね! 百人一首にも採られています。
きれいな言葉に騙されがちですが、これ、ただのエロ親父の歌です。
「ピチピチの踊り子をもっと見てた~い(ヨダレ)」ですからね。

二「花の色は 霞にこめて 見せずとも 香をだに盗め 春の山風」(僧正遍照)
花の色は見えなくても、せめて香りを盗んで来い! 春の山風よ。
坊さんが「盗すめ!」なんて言っちゃうのは、けっこう大胆じゃありません?

三「名にめでて 折れるばかりぞ 女郎花 我おちにきと 人に語るな」(僧正遍照)
その名のせいでつい折っちゃったんだからな。俺が堕落したんじゃないぞ!
ってちょっと言い訳がましい遍照。
「女」であればつい反応しちゃうんですね。それが花でも。

四「よそに見て かへらむ人に 藤の花 はひまつはれよ 枝は折るとも」(僧正遍照)
この歌、詞書きには「ある女たちが藤の花見に立ち寄った際に詠まれた」と記されています。
だとするとヤバいですよ、だって女たちが立ち去ろうとした途端… 
「藤の花よ這いまつわって引き留めろ、枝が折れても!」と必死の懇願!
どんな顔をしていたんでしょうね、この時の遍照は…

五「今こむと 言いて別れし 朝より 思ひぐらしの ねをのみぞなく」(僧正遍照)
遍照の恋歌です。今すぐ行くよ~って朝別れてから、一日中泣いてます…
「ひぐらし」に「蜩」が掛かっています。さすがの六歌仙ですから、このくらいの技巧もあります。

六「山風に 桜ふきまき 乱れなむ 花のまぎれに 立ちとまるべく」(僧正遍照)
これは「離別歌」です。
「立ち止まってくれるように、桜よ吹き乱れよ!」なんて、なんだか遍照らしくないカッコイイ歌ですね。

大和物語(第168段)には、出家前の遍照(良少将)のプレイボーイな姿が描かれています。
その一部をご紹介しましょう。

良少将はある女に、「今宵、必ず逢はむ」と約束したのですが、それを本人すっぽかします。
女は一晩中待ち続け「丑三つ」になったのを聞き、良少将に歌を送ります。

「人心 うしみついまは 頼まじよ」
もうあんたには期待しないよ!
「うしみつ」に「丑三つ(時)」と「憂し、見つ」が掛けられています。

やべぇ! と飛び起きた「良少将」はこう返しました。
七「夢に見ゆやと ねぞ過ぎにける」(僧正遍照)
ゴメン…寝過ごしちゃった、、
「ね」に「子(時)」と「寝」が掛けられています。

大和物語にはなんと! かの絶世の美女「小野小町」との関係も描かれています。
小野小町が清水詣でに出かけた折、素敵な読経の声(良少将)がするので、こう呼びかけます。
「岩の上に 旅寝をすれば いと寒し 苔の衣を われに貸さなん」(小野小町)
ああ寒い、苔の衣(僧衣)を貸してくださらない?

そこですかさず良少将は、
八「世をそむく 苔の衣は ただ一重 かさねばうとし いざふたり寝む」(僧正遍照)
よっしゃ! 二人で寝よ寝よ~!!

や、やばいですね。
これは色好みを超えて、色狂いです。

でも遍照、偉い方々にめっぽう可愛がられます。それも時の帝にです。

九「みな人は 花の衣に なりぬなり 苔の袂よ 乾きだにせよ」(僧正遍照)
出家前、遍照は「仁明天皇」の寵遇を受けていました。
天皇が亡くなったショックから出家したといいますから、よほど深い仲だったのでしょうね。
この歌は喪が明けてみんなは美しい着物に着替えたのに、私はいまだ泣き濡れてばかり。
せめて苔(僧衣)の袂よ乾いてくれ、という歌です。

十「ちはやふる 神や切りけむ つくからに 千歳の坂も 越えぬべらなり」(僧正遍照)
仁明天皇亡き後、遍照は天皇の第三皇子である光孝天皇とも親交を深め、和歌の師となりました。
この歌は光孝院の叔母さんの八十路の賀で歌ったものです。
ところで平安時代の女性の平均寿命は30歳弱だったといいますから、なんともご長寿な叔母さまですね。

ちなみに遍昭は自身七十の賀の折に、光孝院からこんな歌を送られています。
「かくしつつ とにもかくにも ながらへて 君か八千代に あふよしもがな」(光孝院)
とにもかくにも永らえて あたなの八千代の人生を目にしていたい。
天皇からこんなことを言われるなんて、遍昭としては感無量であったでしょうね。
→関連記事「賀歌 ~日本人のバースデーソング~

さて、冒頭でご紹介した最澄の五つの「心願」にはこんな一文があります。

「いまだ理を照らす心を得ざるよりこのかた才芸あらじ。其の二」
仏教の真理を身に付けぬうちは技術、芸術などには手を染めない。

こんなの、遍照にはとても受け入れられないでしょうね…
ただ、高潔な僧だけが衆生を幸せに出来るのではありません。

遍照の歌を鑑賞して、何か気づくことはありませんでしたか?
それは「笑い」です。

俗な事柄で滑稽を誘い人々を笑わせる、これだって衆生を幸せにする手段じゃありませんか!?
いや~遍照、実はすごいお坊さんです。最後に汚名返上! となりました。

(書き手:和歌DJうっちー)

色彩感覚に乏しい平安歌人? 好きな色は「白」一択! の謎。


突然ですが質問です。
あなたが好きな色は何色ですか?

学研教育総合研究所が行った「小学生白書Web版(2011年12月調査)」によると、
男子は「青色」、女子は「水色」が“好きな色”の回答に最も選ばれていました。
男女ともに青系の色が好まれていることは興味深いですね。
→「学研教育総合研究所 小学生白書Web版

ところでこの質問、平安歌人にしてみたらどうなると思います?
高貴の代名詞ともいえる「紫色」、または錦織を象徴する「紅色」などが上位に選ばれる!
なんて答えるのは軽率です。

平安歌人が大好きな色、
それは…

ダントツで「白」!
なのです。

6「春たてば 花とや見らむ 白雪の かかれる枝に うぐひすぞ鳴く」(素性法師)
59「桜花 さきにけらしな あしひきの 山のかひより 見ゆる白雲」(紀貫之)
301「白浪に 秋の木の葉の 浮かべるを 天の流せる 舟かとそ見る」(藤原興風)
223「折りて見ば 落ちぞしぬべき 秋萩の 枝もたわわに おける白露」(よみ人しらず)

「白雪」、「白雲」、「白浪」、「白露」…
古今和歌集ではこのように、白であることに着目した歌で溢れています。

そして思い出してもみてください。
日本美の特質を最もよく表わしている言葉に「雪月花」なんてのがありますが、
雪も月も花も、すべて「白」であることが賞美されているのです。

332「あさぼらけ 有明の月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪」(坂上是則)
75「桜散る 花の所は 春ながら 雪ぞ降りつつ 消えがてにする」(承均法師)

これらの歌では雪月花の白い様が相互に愛でられています。
ちなみに月を「黄色」、桜を「薄ピンク色」に形容したりしますが、これはまったく現代的な感覚です。

平安歌人たちの「白好き」は圧倒的であったのです。

一方で白以外の色が詠まれた歌はというと?
なんと、古今和歌集ではほとんど見つけることができません。

24「常盤なる 松の緑も 春くれば 今ひとしほの 色まさりけり」(源宗于)
25「我がせこが 衣はるさめ 降るごとに 野辺の緑ぞ 色まさりける」(紀貫之)
26「青柳の 糸よりかくる 春しもぞ 乱れて花の ほころびにける」(紀貫之)
早春の松や野辺を彩る、爽やかな「青」と「緑」。

293「もみち葉の 流れてとまる みなとには 紅深き 浪や立つらむ」(素性法師)
294「ちはやふる 神世もきかず 竜田川 から紅に 水くくるとは」(在原業平)
錦に例えられる艶やかな「紅」。

これらの名が辛うじて見えるのみです。
もしかして平安歌人、私たちの想像に反して色彩感覚に乏しかったのでしょうか?

でも古今集の四季歌には豊かな色彩を感じ取ることができます。
自然の移ろいに情趣を感じ、重ね色目なんて微妙な配色までも楽しんだ平安歌人。
にもかかわらず「白色」以外は意に介さなかったのか?

実は彼ら、色ではない方法で歌に彩りを重ねていたのです。

120「我が宿に 咲ける藤波 たちかへり 過ぎがてにのみ 人の見るらむ」(凡河内躬恒)
121「今もかも 咲き匂ふらむ 橘の 小島の先の 山吹の花」(よみ人しらず)
220「秋萩の 下葉色づく 今よりや ひとりある人の いねかてにする」(よみ人しらず)
238「花にあかで なに帰るらむ 女郎花 おほかる野辺に 寝なましものを」(平貞文)
290「吹く風の 色のちくさに 見えつるは 秋の木の葉の 散ればなりけり」(よみ人しらず)

「藤」、「山吹」、「萩」、「女郎花」そして「紅葉」。
このように平安歌人は「色名」ではなく、とりどりの「草花」を詠むことで豊かな色彩を描いていたのです。

ようは彼ら、私たちが考える「color(色知覚)」だけでなく、
色を草木(モノ)そのもの、つまり「all nature(森羅万象)」という概念で捉えていたのです。
大乗仏教の経典「般若心経」にある色即是空の「色」ですね。

ですから、色から「色の属性」だけを取り出してを分類するようなことはせず、
草花(モノ)の数だけ色があるような事態を生んだ。
「藍色」、「紫色」、「茶色」、「柿色」、「朽葉色」…
このように伝統的な色名で、草花の名称と対になっている例は枚挙にいとまがありません。

色とは森羅万象である。
では冒頭でご紹介した白雪や白雲の「白」、色知覚(white)でないとしたらなんなのか?

それは「光そのもの」なのです。
316「大空の 月の光し 清ければ 影見し水ぞ まづこほりける」(よみ人しらず)

白々とした清らな月光…
「清し」とは清浄を形容する言葉ですが、これが名詞の「清ら」になると美の最上級を表わす言葉になります。
つまり光とは美の極致であり、それが具象化されたモノを「白」といったのです。
平安歌人がなにより雪月花を賞美したのは、これらを「白の象徴」として捉えていたからですね。

そうするとさしずめこの歌、かなりヤバイ歌かもしれません。
277「心あてに 折らばや折らむ 初霜の 置きまどはせる 白菊の花」(凡河内躬恒)
白菊に初霜が降りて、一面真っ白のすんごい世界!! あぁ~、どうしていいかわかんなぁ~い♡

(書き手:和歌DJうっちー)

【和歌マニア(第47回)】妄想女子の恋歌日記(恋待ち切れぬ10月の巻)

古今集の恋歌を現代の妄想女子が日記にしてみた。愛しい人を待ち切れぬ女子が行動を起こした! その結末やいかに? 吉三さんの鬼気迫る語りでお送りします。ろっこが語る日本とアメリカ文化の違い。吉三さんのヒミツもお楽しみください。
https://youtu.be/TdWneWfE89E

♪放送で紹介した和歌
694「宮城野の もとあらの小萩 露をおもみ 風を待つごと 君をこそまて」(よみ人しらず)
735「思ひいてで 恋しき時は 初雁の なきてわたると 人しるらめや」(大伴黒主)
748「花すすき 我こそしたに 思ひしか 穂に出でて人に 結ばれにけり」(藤原仲平)

【和歌マニア(第46回)】ラジオドラマ伊勢物語 第1回

和歌マニの新企画!
かの名著「伊勢物語」をラジオドラマに仕立てました。
和歌マニでやるのですから、もちろん爆笑アレンジの伊勢物語です。
主役の昔男(業平)はなんと吉三さんが担当! うっちーのキモイ女役もお聴き逃しなく。
今回は第一段を内容をお送りします。

→「令和歌合せ(卯月の会)」4/28(日)9:50~11:50