おぼつかないづれの山の峰よりか待たるる花の咲きはじむらむ  (西行)

『ああ、気になる、気になる…。愛しい桜よ、お前はどこの山から咲き始めるのか。近くに見えるこちらの山かもしれない、行ってみようか?? いや、行ったとたんに裏のあちらの山から咲くかもしれないぞ、、。去年はどうだったけかな? ...

いづかたに花咲きぬらむと思ふより四方の山辺に散る心かな(待賢門院堀河)

詠み人の堀河はその名のとおり、待賢門院璋子に仕えた女房歌人である。待賢門院と言えばいわくつきの人だ。養父は白河院、鳥羽院の中宮となり崇徳院そして後白河院の母。あの西行の出家にも関係しているとかいないとか…。さてもそのよう...

【和歌マニア(第78回)】平安の三大歌合戦! 寛平后宮歌合、天徳内裏歌合、六百番歌合をご紹介

今も昔も大盛り上がり! 今回は歌合戦ならぬ「歌合せ」の有名なエピソードをご紹介します。寛平后宮歌合はインディーズバンド、壬生忠見はおっちょこちょい!? 今回もろっこワールド満載でお送りします。 和歌の型(基礎)を学び、詠...

朝夕に花待つころは思ひ寝の夢のうちにぞ咲きはじめける(崇徳院)

崇徳院というと、まず「瀬をはやみ」※の歌が先に浮かぶであろう。これは式子内親王や源実朝にも言えることだが、現代では和歌=百人一首になっており、これに採られた歌が歌人の印象をほとんど決めてしまう。現代人に和歌に親しむきっか...

霜まよふ空にしをれし雁がねの帰るつばさに春雨ぞ降る(藤原定家)

いちいち説明を加えると野暮になるというのが新古今の名歌であるが、仕方なく解説をさせていただこう。歌は帰雁のワンシーンである。ここで雁はすでに故郷へ向け飛び立っている。空は凍てつき、さながら雲に霜が置いたように行く先は見え...

春くればたのむの雁もいまはとて帰る雲ぢに思ひ立つなり(源俊頼)

昨日の流れで今日は金葉集の選者、源俊頼の一首をご紹介しよう。『春になったので、たのも(田の面)の雁が今まさに帰らんと、雲の旅路に飛び立ってゆく』。雁は秋の鳥だが、春に詠まれる場合「帰雁」、つまり故郷である北国へ帰る姿が詠...

風吹けば柳の糸のかたよりになびくにつけて過ぐる春かな(白河院)

万葉集では、例えば梅やうぐいすなどと取り合わせるなど、多様な詠まれ方がされた柳だが、貫之がそれを糸に見立てて以降、柳は必ずそう詠まれるものとなった。今日の歌もその一つである。詠み人はなんと白河院。「賀茂河の水、双六の賽、...

青柳の糸よりかくる春しもぞみだれて花のほころびにける(紀貫之)

およそ勅撰和歌集では怒涛の梅の歌群が過ぎたあと、次の桜まで小休止が入る。そこでさらりと詠まれるひとつが、今日の「柳」だ。柳といえば雲竜柳や猫柳もあるが、和歌に詠まれるのは枝垂柳である。これを「糸」に見立て、「よる(撚る)...