山桜咲きそめしよりひさかたの雲井にみゆる滝の白糸(源俊頼)

いつの時代も、名が残る優れた歌人はチャレンジングである。貫之しかり定家しかりである。以前、この両名をつなぐ位置に今日の詠み人、源俊頼がいるとご紹介した。彼は勅撰和歌集の変遷が止んだ平安中後期いわば和歌の第二暗黒期を生きた歌人である。彼の歌論「俊頼髄脳」には嘆きが残る
今日の歌は昨日の貫之とほぼ同趣である。見どころは見立てが「滝の白糸」に変わっているところくらい。どうだろう? いわゆる「長高い歌」ではあるが、私には苦肉の策にみえる。伝統を変えたいけれど変えられない、ぶち壊したいけれどそう出来ない。新風に理解がある帝王がいた新古今時代とは違うのだ! 俊頼はやむにやまれず反旗を翻した、ひとりで… 俊頼の歌には、このもどかしさが滲み出ている。

(日めくりめく一首)

和歌の型(基礎)を学び、詠んでみよう!

代表的な古典作品に学び、一人ひとりが伝統的「和歌」を詠めるようになることを目標とした「歌塾」開催中!

季刊誌「和歌文芸」
令和六年冬号(Amazonにて販売中)