秋風はやや肌寒くなりにけり一人や寝なむ長きこの夜を(源実朝)

少なからず秋風には久しい友との再会を思わせる感動があった、だが今日の歌はどうだろう。『秋風は肌寒くなってきた。一人で寝るのだろうか、長いこの秋の夜を』。印象的なのは「けり」で結んだ三句切れ、この歌において上句と下句の世界はほとんど連絡を断っている。作者にとって秋風とは虚しき身の上を知るひとつの現象に過ぎず、自分とは無関係のよその現象に過ぎないのだ。季節が変わったところで、自分は変わらず孤独に過ごすだけ、源実朝の孤独とはいったいどれほど深くあったのだろう。

(日めくりめく一首)

和歌の型(基礎)を学び、詠んでみよう!

代表的な古典作品に学び、一人ひとりが伝統的「和歌」を詠めるようになることを目標とした「歌塾」開催中!

季刊誌「和歌文芸」
令和六年冬号(Amazonにて販売中)