よそに見て帰らむ人に藤の花這ひまつはれよ枝は折るとも(僧正遍昭)

先に言っておくと、私は僧正遍照のファンである。みなさんはどうだろう、遍照にどのようなイメージをお持ちであろうか? 私のそれは「エロ親父」である。六歌仙の一人だとかなんとか関係ない、大和物語での小野小町とのエピソード、あの百人一首歌※だってそうではないか、鼻の下が伸びまくっているオッサンしか想像できない。
今日の歌も抜群である。『藤の花よ、ねっとり絡みついて引き留めるのだ! 枝は折れようとも』。誰を引き留めたいのかって、自分の寺に立ち寄った女たちである。古今和歌集なんかに採られているから立派に思えるが、ようするにウィット満載の歌だ。もはや藤の花など眼中に入ってこない。結句のダメ押しなんか最高である。

※「あまつ風雲の通ひ路吹きとぢよ乙女の姿しばしとどめむ」(僧正遍昭)

(日めくりめく一首)

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