和歌の本質論(無常そして美)

和歌は「自然」を主題とする、恋であっても心は自然に仮託して歌に詠まれる。ところで自然とは花鳥風月、目に映える事物に収まらない。自然とは移ろうひやまぬ無常が具象した姿であるのだ。

「無常」、それは宇宙を支配する唯一の真理。宗教しかり哲学しかり、この極めて冷淡な理を超克するため古来人類は挑み続けてきた。しかしこれをあるがままに受け入れた民族がいる、古代日本人だ。
いつのころか日本人は無常への抵抗をあきらめた、それどころか共に歩むことを選んだのだ、なんと自然=無常と対話を始めたのである。
しかし人間は、人間同士が行うように自然と対話することは出来ない。それができる唯一の手段、それが「美」であった。「あはれ」という美的情趣をもってのみ、人間は真に自然と心を合わせることが出来たのだ。和歌が自然美に彩られているのはこうした理由がある。

一首を侮ることなかれ。和歌が無常というこの世の本質に迫っている以上、優れた一首にはこの世を明らかにする鮮烈なメッセージが含まれている。安寧、恐怖、快楽、円寂。美的情趣の強烈な歌から同時に、このような一服の「感動」を得られるのも、和歌が先人が明らかにした人生の道標であるからだ。

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(書き手:歌僧 内田圓学)

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