夏草は繁りにけりな玉鉾の道ゆく人も結ぶはかりに(藤原元真)

昨日までは純白の美しい卯の花をご紹介したが、今日は一転して「夏草」の歌である。特に限定したものではないので、ようするに雑草のたぐいである。夏と言えばこれらが繁りに繁り、甚大な繁殖力をもって辺りを制する。この季節に花の歌がわりに少ないのは、草草に埋もれてしまっているせいかもしれない。
さてこのように一見厄介者の夏草であるが、意外なところで役に立つ。何かといえば「目印」だ。道を行く旅人、一歩知らない土地に踏み込めば帰り道など分からなくなる、そのために夏草を結び印としたのだ。しかし歌の世界は風流であるが、はたしてこれが実用に耐えただろうか? 自分と他の夏草の区別がつくだろうか、帰るまでに埋もれやしないだろうか。と、このように野暮に考えては歌は生まれないのである。※ちなみに夏草を結ぶことには、旅の安全祈願の意味もある

(日めくりめく一首)

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