わが宿の梅の盛りにくる人は驚くばかり袖ぞ匂ほへる(藤原公任)

今日の詠みびと藤原公任、彼は平安時代中期を代表する文化人である。拾遺和歌集の元となった「拾遺抄」、後に三十六歌仙として知られる「三十六人撰」を編纂。後世の日本文化に多大な影響を与えた、和歌と漢詩(適句)のコラボ撰集「和漢朗詠集」も彼の手によるものだ。大鏡にも載る「三舟の才」のエピソードからは、帝王道長をして、文化・教養において公任に勝る者はおらぬといわしめんばかり。しかし、それがそのまま詠歌の“センス”とイコールとはならない。
本日の歌をご覧いただきたい。香りの強さを伝えんがために「驚くばかり匂ほえる」とは、あまりに露骨ではないだろうか。またくだんの三舟における歌は「小倉山嵐の風の寒ければ紅葉の錦着ぬ人ぞなき 」と、得意満面ドヤ顔で詠んだ歌にしては、見立は常套的で拍手喝采とはいたしかねる。

(日めくりめく一首)

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