さむしろの夜半の衣手さえさえて初雪白し岡の辺の松(式子内親王)

式子内親王の雪である。彼女は新古今時代の歌人ではあるが、その歌風は当時趨勢を得たシュルレアリスムとは距離を置く。どちらかというと後のムーブメント、玉葉・風雅の写生歌に通じるといえよう。しかし純写生歌という風でもなく今日の歌のように、先日の「吉野山の雪」よろしく寒さで雪を知るという古典的趣向を孕む。だがどうだ、松の緑と白雪の対比が美しくなにより「サ行」の調べ麗しく、風景以上の寒気を感じられよう。これほどの実力者、新古今にも玉葉・風雅でもそうはお目にかかれない。

(日めくりめく一首)

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