夢よりもはかなきものは夏の夜の暁かたの別れなりけり(壬生忠岑)

昨日の後鳥羽院の歌、現実のむなしさにせめて夢で逢えたいという哀訴が込められていた。だが果たして現実に逢瀬を遂げたところで、それは本当に幸福なのだろうか? 出会いと別れは表裏一体、夜が必ず来るように朝もまた必ずやって来る。逢瀬は絶頂を極めるほどに、別れは残酷な仕打ちとなるだろう。それでも逢いたいと思うのか、夢の中だけに生きていた方が幸せではないのか。今日の歌は迫真の調べをもって我々に真理を問いかける。詠み人は壬生忠岑、実感なくしてこのような絶唱は成し得ないだろう。

(日めくりめく一首)

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