二十二番「吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風を嵐といふらむ」(文屋康秀)~ 百人一首の物語 ~

二十二番「吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風を嵐といふらむ」(文屋康秀) 「和歌」というと大抵の人間が貴族の雅な恋愛や美しい四季への真心のみで仕上がっているかのように捉えている。ちまたの指南書がそのように喧伝している...

二十一番「今来むと言ひしばかりに長月の有明の月を待ち出でつるかな」(素性法師)~ 百人一首の物語 ~

二十一番「今来むと言ひしばかりに長月の有明の月を待ち出でつるかな」(素性法師) 素性法師の父はあの僧正遍照、桓武天皇の曾孫にあたり確かな血統ゆえ殿上人にまで昇る。しかし父の助言もあって若くして出家、その後は「歌」をつうじ...

二十番「わびぬれば今はた同じ難波なるみをつくしても逢はむとぞ思ふ」(元良親王)~ 百人一首の物語 ~

二十番「わびぬれば今はた同じ難波なるみをつくしても逢はむとぞ思ふ」(元良親王) 悲劇の貴公子、その最後を飾るのが二十番の元良親王だ。父は陽成院、譲位の七年後に生まれた第一皇子であったが、皇統が光孝系に移ったためその地位に...

十九番「難波潟みじかき芦のふしの間も逢はでこの世を過ぐしてよとや」(伊勢)~ 百人一首の物語 ~

「難波潟みじかき芦のふしの間も逢はでこの世を過ぐしてよとや」(伊勢) 伊勢守従五位上藤原継蔭の娘、それが十九番の伊勢だ。女性乏しき古今和歌集において小町を上回る二十三首が採られ、その集を十分に代表する。先に敏行を“貫之よ...

十八番「住の江の岸による波よるさへや夢の通ひ路人めよくらむ」(藤原敏行朝臣)~ 百人一首の物語 ~

十八番「住の江の岸による波よるさへや夢の通ひ路人めよくらむ」(藤原敏行朝臣) 名うての貴公子が連なる十番台において突如謎の男が現れた、藤原敏行である。ちなみに業平にもあった「朝臣」だが、これは天武天皇が制定した八色の姓に...

十七番「ちはやふる神代も聞かず竜田川からくれなゐに水くくるとは」(在原業平朝臣)~ 百人一首の物語 ~

十七番「ちはやふる神代も聞かず竜田川からくれなゐに水くくるとは」(在原業平朝臣) 在原業平は行平の弟、色好みで知られ… などとやりだすときりがないのでここでは百人一首歌に絞って話をさせてもらう。 凡作撰百人一首において、...

十六番「立ち別れいなばの山の峰に生ふるまつとし聞かば今帰り来む」(中納言行平)~ 百人一首の物語 ~

十六番「立ち別れいなばの山の峰に生ふるまつとし聞かば今帰り来む」(中納言行平) 中納言行平、実名を在原行平という。高貴な出自も祖父平城上皇が薬子の変により出家、父も連座して太宰府に左遷となり、九歳には臣籍に下る。弟に業平...

十五番「君がため春の野に出でて若菜つむわが衣手に雪は降りつつ」(光孝天皇)~ 百人一首の物語 ~

十五番「君がため春の野に出でて若菜つむわが衣手に雪は降りつつ」(光孝天皇) 個性というべきか、なんとも穏やかな歌である。まず名前からして「こうこう(好々)」なのだから、というのは得意のジョークであるが、陽成天皇の廃位によ...

十四番「陸奥のしのぶもぢずり誰ゆゑに乱れそめにし我ならなくに」(河原左大臣)~ 百人一首の物語 ~

十四番「陸奥のしのぶもぢずり誰ゆゑに乱れそめにし我ならなくに」(河原左大臣) 源融は嵯峨天皇の皇子、臣籍降下するも従一位の左大臣まで昇った。知られるのは彼の「河原院」だろう、六条に構えた豪奢な邸宅は庭に陸奥塩釜の風景を模...

十三番「筑波嶺の峰より落つる男女川恋ぞつもりて淵となりぬる」(陽成院)~ 百人一首の物語 ~

十三番「筑波嶺の峰より落つる男女川恋ぞつもりて淵となりぬる」(陽成院) ようやく恋歌らしい恋歌が登場、陽成院の一首だ。採られたのは後撰集、詞書きには「釣殿の皇女につかはしける」とありラブレター代わりの歌だとわかる。単純明...

十二番「天つ風雲のかよひ路吹き閉ぢよをとめの姿しばしとどめむ」(僧正遍照)~ 百人一首の物語 ~

十二番「天つ風雲のかよひ路吹き閉ぢよをとめの姿しばしとどめむ」(僧正遍照) 十二番に登場するは僧正遍照、ここに最後の六歌仙が登場し“伝説歌人”の章は区切りとなる。 ところで仮名序には「僧正遍昭は歌のさまは得たれどもまこと...

十一番「わたの原八十島かけて漕ぎ出でぬと人には告げよ海人の釣舟」(参議篁)~ 百人一首の物語 ~

十一番「わたの原八十島かけて漕ぎ出でぬと人には告げよ海人の釣舟」(参議篁) 蝉丸に続いて採られたのは参議篁、実名を小野篁という。ちなみに参議とは中納言に次ぐポジション、これ以上を公卿と言って最高幹部の一員をなす。ところで...

十番「これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂の関」(蝉丸)~ 百人一首の物語 ~

十番「これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂の関」(蝉丸) 「紅旗征戎吾ガ事ニ非ズ」。孤高のひねくれ者、藤原定家の名文句であるがやはりその人らしいというべきか。平凡は喜撰、小町と続けてきたら遍照、業平とやりそう...

九番「花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに」(小野小町)~ 百人一首の物語 ~

九番「花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに」(小野小町) 百人一首のなかでも白眉たる一首がこれだ、九番「花の色は」である。この歌に出会って古典和歌の魅力に憑りつかれた御仁は相当いると思う。なぜそう...