1208453
立冬の頃、11月初旬には気持ちのいい小春日和にも出会えたものですが、
小雪の頃を過ぎれば本格的な冬、雪の話題もちらほら聞こえるようになります。

さて、古今和歌集の「冬部」歌は全部で29首あります。
その中で「雪」が詠まれた歌は、なんと22首もあります。
この極端は偏りはどこかで見たことがありますね、

そう「夏部」の「ほととぎす」です。
あの鳥は夏部34首の、なんと28首に登場します。
→「夏を独占! ほととぎすの魅力

ただ、花が咲き競う夏とは違い、冬は花のない季節です。
そこに美を求めるとしたら、対象はおのずと雪になって不思議ではありません。

この記事の音声配信「第15回 雪の歌セレクション」を
Youtubeで聴く
iTunes Podcastで聴く

ひとえに「雪」といえど、古今和歌集では色々な詠まれ方をしている点に注目です。
傾向としては以下の3パターンににまとめられます。

■1.純粋に雪の情景を詠む場合、これは分かりやすいですね。
317「夕されば 衣手さむし みよしのの 吉野の山に み雪ふるらし」(よみ人しらず)
318「今よりは つぎて降らなむ 我宿の 薄おしなみ ふれるしら雪」(よみ人しらず)
319「ふる雪は かつぞ消ぬらし あしひきの 山のたぎつ瀬 音まさるなり」(よみ人しらず)

■2.寂寥の象徴として詠まれる場合もあります。
327「みよしのの 山の白雪 ふみわけて 入りにし人の おとづれもせぬ」(壬生忠岑)
ふみに「踏み」と「文」が掛かっています。こういうひと工夫が和歌の面白さです

328「白雪の 降りてつもれる 山里は すむ人さへや 思ひ消ゆらむ」(壬生忠岑)
329「雪ふりて 人もかよはぬ 道なれや あとはかもなく 思ひ消ゆらむ」(凡河内躬恒)
雪が積もって思ひ(火)が消える、「消ゆ」は雪の縁語でもありますね

■3.花の比喩として詠まれる場合、雪の大半はこの詠まれ方です。
323「雪ふれは 冬ごもりせる 草も木も 春に知られぬ 花そさきける」(紀貫之)
雪を花(梅)に見立てるのは基本ですが、「春に知られぬ花」というのが素敵です

330「冬ながら 空より花の ちりくるは 雲のあなたは 春にやあるらむ」(清原深養父)
こちらも花の見立てですが、「花を運んできた雲、あなたは春なのでしょうか?」ってかっこよすぎますよ!

337「雪ふれば 木ごとに花ぞ 咲きにける いづれを梅と わきてをらまし」(紀友則)
※実はこの歌、「木」と「毎」つまり「梅」のへんとつくりを詠んでいるのです。百人一首にも採られた、「吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を 嵐といふらむ」(文屋康秀)と同じ発想ですね

比喩の別バージョンで、月に例えるのもあります。
332「朝ぼらけ 有明の月と 見るまてに 吉野の里に ふれる白雪」(坂上是則)

枯花の季節でも、「美はここある」と言わんがばかりの歌が揃っています。

ただ個人的には疑問も残ります。
それは「雪は本当に美しいか?」ということです。

私の故郷は山間部(島根県奥出雲)の豪雪地帯でしたので、雪害も多く目にしました。
ですからしんしんと降る雪を見て、
333「消ぬがうへに 又も降りしげ 春霞 立ちなは深雪 まれにこそ見め」(よみ人しらず)
のように「もっと降れ~」、なんて呑気に言っている余裕はありません。

豪雪地帯の人間は、
「タイヤチェーン付けないとな…」とか
「早く起きて雪かきしないとな…」とか
「除雪車(私の地元はブルドーザー)来るかな…」などと考えるものなのです。

それは昔も同じ。
「雪散るや おどけも言えへぬ 信濃空」
「これがまあ 終(つひ)のすみかか 雪五尺」

これは信濃北部(長野)の俳人、小林一茶の俳句です。
一茶の雪こそが、私が知っている雪です。

古今和歌集は平安「美」の結晶でありますが、
それは極めて「都会的」な美であることが分かります。

(書き手:内田かつひろ)

 

平成和歌所から本が出ました。その名も「百人一首の歌人列伝」!
百人一首は歌ではなく「歌人を楽しむ」ものです。厳選した百人一首二十歌人の面白エピソードと代表歌をぜひ知ってください。
これを読めば「はるか昔にいた正体不明のオジサン」だった歌人たちが、グッと身近に感じられることでしょう。
そして本書を読み終わった後、あらためて百人一首を一番から眺めてみてください。
王朝の歴史絵巻が紐解かれ、つまらなかったあの百首歌たちが息吹を宿し、断然おもしろく感じられるはずです。

【目次】
・権中納言定家(藤原定家) 「怒れる天才サラリーマン」
・鎌倉右大臣(源実朝) 「甘えん坊将軍、鎌倉の海に吠える」
・在原業平朝臣(在原業平) 「愛され続けるプレイボーイ」
・和泉式部 「恋にまっすぐな平安ジェンヌ」
・紀貫之 「雑草が咲かせた大輪の花」
・凡河内躬恒 「麗しき二番手の真価」
・西行法師 「出家はつらいよ、フーテンの歌人」
・小野小町 「日本的、恋愛観のルーツ」
・源俊頼朝臣 「閉塞感をぶち壊せ! 孤独なチャレンジャー」
・式子内親王 「色と光を自在に操る印象派の女王」
#コラムその1 百人一首とは「王朝の栄枯盛衰物語」である!
・後鳥羽院 「お前のものは俺のもの、中世のジャイアン」
・菅家(菅原道真) 「悲劇の唇が吹く イン・ア・サイレント・ウェイ」
・崇徳院 「ここではないどこかへ」
・清少納言 「元祖! 意識高い系OLの可憐なる日常」
・柿本人麻呂 「みんなの憧れ、聖☆歌人」
・権中納言敦忠(藤原敦忠) 「禁断と破滅、平安のロミオとジュリエット」
・中納言家持(大伴家持) 「流れるままに。家持たぬ家持の万葉オシャンティー」
・後京極摂政前太政大臣(九条良経) 「天才貴公子が奏でるロンリネス」
・伊勢 「女貫之の冷たい仮面」
・能因法師 「元祖旅の歌人のノー、インドア宣言! 」
・皇太后宮大夫俊成(藤原俊成) 「和歌界のゴッドファーザー」
#コラムその2 百人一首は「ジジイのための歌集」である!

わくわく和歌ワークショップ はじめての古今伝授と連歌会

平成和歌所では、誰でも歌を楽しめる「あさぎいろ連歌会(Word Association Game)」を行っています。日本語の「ことばあそび」を存分に楽しみましょう。

和歌マニア♪ 日本文化の王道をあそび倒す! ラジオ 和歌マニア♪

古典和歌を爆笑エンターテイメントとしてトコトン遊び倒していく番組です。 ニンマリ笑って、けっこうタメになる! 和歌DJウッチーこと「内田かつひろ」と英語講師「ろっこ(rocco)」の鋭い突っ込みでお送りします。

Youtubeで聴く iTunes Podcastで聴く
「写真歌会 あさぎいろ」
あなたも和歌・短歌を詠んでみませんか? 平安歌人になりきって「和歌」と四季折々の情景(写真)をご披露いただけます。