昨日の卯の花は夕月夜、ほのかな明かりが残っていた。それが新月であったらどうであろう? 今日の詠み人は西行法師、旅の詩人は夜さへ構わず風雅を求め野山を巡る。もとより人工的な灯りなどない射干玉の闇、月がなければ足取りも止む。しかしどうだ、ここに月明に見まがう光源があるではないか。それは卯の花、真白き花は日に晒した布のごとく新月の闇をさらす。よしこれで、まだ見ぬ深山の桜を求められる! そう言わんばかり、西行は卯の花などただの灯りと役立てるのであった。
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