「あらたしき」「年の初め」「初春」と、これでもかと元日が打ち出さているが、古来、正月に降る雪は豊作の吉兆であったという。これが四句におよぶ序詞となり、そのように「佳いことが積もりますように」と結ぶ、まことにおめでたい歌である。
作者は大伴家持。家持は万葉集の実質的な撰者であると伝わるが、じつのところこの歌こそが万葉集二十巻を締めくくる歌であった。しかもこの予祝を込めた一首は、万葉集巻一の巻頭の雄略天皇による祝福の一首※と呼応しているという。家持のこの気配りによって、玉石混交の万葉集は、神を祖とする王権にふさわしい晴れやかな歌集となった。
※ 「籠もよ み籠持ち 堀串もよ み堀串もち この岡に 菜摘ます子 家告らせ 名告らさね そらみつ 大和の国は おしなべて 我れこそ居れ しきなべて 我れこそ居れ 我こそば 告らめ 家をも名をも」(雄略天皇)
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