橋本治さんの逝去に寄せて

橋本治さんが亡くなった。まだ70歳だったそうだ。
橋本さんといえば「桃尻娘」や「『三島由紀夫』とはなにものだったのか」などに代表される小説家また批評家として知られるが、私にとっては古典文学を身近にしてくれた偉大なる古典マニアの先輩だ。

枕草子を通読したつもになっているが、これは橋本さんによる「桃尻語訳 枕草子」であったし、源氏物語の世界観をわが身に得たのも、氏の「窯変源氏物語」であった。
他にもあげればきりがないが、「風雅の虎の巻」や「これで古典がよくわかる」などによって、私は古典マニアへの道にいざなわれたといって過言ではない。

橋本さんの文章はなにが魅力的だったのだろう? 古典を紹介する本はちまたにいくらでもある。
思うにそれは古典への愛ではないだろうか。偉ぶることがなく、ただ本人が好きだから考え抜く。この姿勢に、私は惹かれたのだ。
橋本さんの作品によって、いかめしい王様だった古典文学は私の友人になった。感謝しきれない。

最近はあの回りくどい言い回しを避けて、学術的な文献を読むことが多くなっていた。しかし知識は増えても、橋本さんの作品に感じたスリリングはない。
残念だ。おそらく現在、橋本さんのような切り口で古典を語っている人はいない。日本人の古典ぎらいはいっそう進むだろう。

昨年は大岡信さんが亡くなられた。個人的に著名人の訃報に感じ入る方ではないのだが、立て続けに起こったやはり愛好する文筆家の逝去に、すこし悲しくなっている。

(和歌DJうっちー)

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