和歌の入門教室【実践編】「詠みぶり(和歌の七大詠法)を意識して詠む」

先日の入門教室では和歌の詠みぶり=作風についてご紹介しました。
典型的な古典和歌とはどのようなものか、おおよその要点がご理解頂けたかと思います。
→関連記事「和歌の入門教室 詠みぶり(和歌の七大詠法)を知る

それではその七大詠法のパターンに基づいて、実際に歌を詠みわけてみましょう。

題は「向日葵(ひまわり)」です。
向日葵は今でこそ夏を代表する花ですが、日本伝来は17世紀頃なので当然勅撰集で歌われたことがないテーマです。

写実

「夏の日は朝な夕なに照りつけて色ぞまさるる向日葵の花」(和歌DJうっちー)
夏の太陽が昼だけでなく朝夕かまわず照りつけて、向日葵の花が咲き誇っている。夏を象徴するようなワンシーンです。

誇張

「雲居はるか生ひにけらしな向日葵の日陰に曇る夏の太陽」(和歌DJうっちー)
(下から見上げると)向日葵は雲の果てまで伸びているようだ。向日葵の花で夏の太陽が曇っている。少々過剰な演出で、向日葵の大きさを表現しています。(※古語は太陽ではなく「日」と表すのが正解です)

空想

「そよ風に萎れし花の夕暮れは常よりあつき夏の思ひで」(和歌DJうっちー)
秋の訪れを知らせるそよ風に萎れてしまった向日葵の花、その花の色が映ったような夕暮れは、いつもの夏よりも暑かった(熱かった)思い出が見るようだ。

本歌取り

「向日葵やふるき軒端に咲くをみてなほ睦ましき昔なりけり」(和歌DJうっちー)
本歌※を知らしめつつ、新しい情景を詠みます。
※ももしきやふるき軒端のしのぶにもなをあまりある昔なりけり」(順徳院)

比喩

「夏草の茂れる野辺に枯れもせず笑顔うるはし向日葵の人」(和歌DJうっちー)
向日葵をある人の笑顔を絶やさぬ人に喩えています。

対比

「蝉しぐれ降りぞまされる青空に待ちぼうけする向日葵の花」(和歌DJうっちー)
蝉しぐれが止まない青空に、ひたすた立ち続ける黄色い向日葵。分かりやすい色の対比ですね。

擬人

「向日葵も暑しとみえて夏の日を背けて今は雨ほしげなり」(和歌DJうっちー)
向日葵もさすがに昨今の酷暑は耐え難いのではないでしょうか?

俳諧

老ひぬれば花は日方を向かぬなり人は言葉をきかずなりけり」(和歌DJうっちー)
向日葵が太陽の方を向くのは生長盛んな若い時期だけ、生長がとまればある方向しか向かなくなり、頑固おやじになってしまうようです。

いかがでしょうか。
和歌にはさらに歌語の設定があるので、これを受ければ歌にもう少し深みが生まれると思います。もし「恋」を詠むのなら、なおのこと歌語を意識したいですね。
※花には西洋の「花言葉」の設定があるので、これを歌語に置き換えて詠んでみるのもありです

(書き手:歌僧 内田圓学)

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