二十九番「心あてに折らばや折らむ初霜の置きまどはせる白菊の花」(凡河内躬恒)~ 百人一首の物語 ~

二十九番「心あてに折らばや折らむ初霜の置きまどはせる白菊の花」(凡河内躬恒) ついに古今集撰者がお目見え、凡河内躬恒だ。古今の撰者はあと三人、三十番の壬生忠岑と三十三番の紀友則そしてご存知三十五番の紀貫之であるが、とりわ...

二十八番「山里は冬ぞさびしさまさりける人目も草もかれぬと思へば」(源宗于朝臣)~ 百人一首の物語 ~

二十八番「山里は冬ぞさびしさまさりける人目も草もかれぬと思へば」(源宗于朝臣) 「貫之は下手な歌よみにて古今集はくだらぬ集に有之候…」※1とは正岡子規による歴史的文句だが、なにも古今集における“下手な歌よみ”は貫之に限ら...

二十七番「みかの原わきて流るる泉川いつ見きとてか恋しかるらむ」(中納言兼輔)~ 百人一首の物語 ~

二十七番「みかの原わきて流るる泉川いつ見きとてか恋しかるらむ」(中納言兼輔) 古典などというとなにやら深淵広大なる山脈を思わせるが、存外知ってしまえば近所の裏山のごとく身近な存在に変わるだろう。この中納言兼輔(藤原兼輔)...

二十六番「小倉山峰のもみぢ葉心あらば今ひとたびのみゆき待たなむ」(貞信公)~ 百人一首の物語 ~

二十六番「小倉山峰のもみぢ葉心あらば今ひとたびのみゆき待たなむ」(貞信公) 平安時代とはまさに表向き平安であって、その前半、歴史に残る武力紛争は平将門、藤原純友の乱くらいであった。この時代の権力はもっぱら謀略によって定ま...

二十五番「名にしおはば逢坂山のさねかづら人に知られでくるよしもがな」(三条右大臣)~ 百人一首の物語 ~

二十五番「名にしおはば逢坂山のさねかづら人に知られでくるよしもがな」(三条右大臣) 「王朝の幕開けと伝説歌人」、「失意に乱れる純血の貴公子」と続いた王朝物語はここらで新たな章を開く、それはさしずめ「聖帝の輝き」とでも言う...

二十四番「このたびは幣もとりあへず手向山紅葉の錦神のまにまに」(菅家)~ 百人一首の物語 ~

二十四番「このたびは幣もとりあへず手向山紅葉の錦神のまにまに」(菅家) 大江千里に続いて学者がご登場、菅家こと菅原道真である。ところで大江の血筋は栄えて後には大江匡房(百人一首では権中納言匡房)なる異才も生んだ、和泉式部...

二十三番「月見れば千々にものこそ悲しけれ我が身一つの秋にはあらねど」(大江千里)~ 百人一首の物語 ~

二十三番「月見れば千々にものこそ悲しけれ我が身一つの秋にはあらねど」(大江千里) 念のため断っておくが千里は「ちさと」と発する。間違って「せんり」などと読めば格好悪いふられ方をされてしまうやもしれんのでご注意いただきたい...

二十二番「吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風を嵐といふらむ」(文屋康秀)~ 百人一首の物語 ~

二十二番「吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風を嵐といふらむ」(文屋康秀) 「和歌」というと大抵の人間が貴族の雅な恋愛や美しい四季への真心のみで仕上がっているかのように捉えている。ちまたの指南書がそのように喧伝している...

二十一番「今来むと言ひしばかりに長月の有明の月を待ち出でつるかな」(素性法師)~ 百人一首の物語 ~

二十一番「今来むと言ひしばかりに長月の有明の月を待ち出でつるかな」(素性法師) 素性法師の父はあの僧正遍照、桓武天皇の曾孫にあたり確かな血統ゆえ殿上人にまで昇る。しかし父の助言もあって若くして出家、その後は「歌」をつうじ...

二十番「わびぬれば今はた同じ難波なるみをつくしても逢はむとぞ思ふ」(元良親王)~ 百人一首の物語 ~

二十番「わびぬれば今はた同じ難波なるみをつくしても逢はむとぞ思ふ」(元良親王) 悲劇の貴公子、その最後を飾るのが二十番の元良親王だ。父は陽成院、譲位の七年後に生まれた第一皇子であったが、皇統が光孝系に移ったためその地位に...

十九番「難波潟みじかき芦のふしの間も逢はでこの世を過ぐしてよとや」(伊勢)~ 百人一首の物語 ~

「難波潟みじかき芦のふしの間も逢はでこの世を過ぐしてよとや」(伊勢) 伊勢守従五位上藤原継蔭の娘、それが十九番の伊勢だ。女性乏しき古今和歌集において小町を上回る二十三首が採られ、その集を十分に代表する。先に敏行を“貫之よ...

十八番「住の江の岸による波よるさへや夢の通ひ路人めよくらむ」(藤原敏行朝臣)~ 百人一首の物語 ~

十八番「住の江の岸による波よるさへや夢の通ひ路人めよくらむ」(藤原敏行朝臣) 名うての貴公子が連なる十番台において突如謎の男が現れた、藤原敏行である。ちなみに業平にもあった「朝臣」だが、これは天武天皇が制定した八色の姓に...

十七番「ちはやふる神代も聞かず竜田川からくれなゐに水くくるとは」(在原業平朝臣)~ 百人一首の物語 ~

十七番「ちはやふる神代も聞かず竜田川からくれなゐに水くくるとは」(在原業平朝臣) 在原業平は行平の弟、色好みで知られ… などとやりだすときりがないのでここでは百人一首歌に絞って話をさせてもらう。 凡作撰百人一首において、...

十六番「立ち別れいなばの山の峰に生ふるまつとし聞かば今帰り来む」(中納言行平)~ 百人一首の物語 ~

「立ち別れいなばの山の峰に生ふるまつとし聞かば今帰り来む」(中納言行平) 中納言行平、実名を在原行平という。高貴な出自も祖父平城上皇が薬子の変により出家、父も連座して太宰府に左遷となり、九歳には臣籍に下る。弟に業平という...