七夕の天の羽衣かさねてもあかぬ契りやなほ結ぶらむ(皇后宮肥後)

これほど艶めかしい七夕歌があったろうか。『何度も何度も重ねても、ふたりは満足できない恋を結んでいるのだろう』。「重ねる」はもちろん「年に一度の逢瀬」であるが、加えて互いの「体」を思うとき、牽牛と織女は彼方天体のアルファ星から一塊の人間に還る。詠み人は皇后宮肥後、肥後は女房歌人の活躍乏しい院政時代において恋歌で鳴らした。だからこそ詠めた、妖艶の匂い際立つ一首である。

(日めくりめく一首)

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