袖ひぢてわが手に結ぶ水のおもに天つ星合の空をみるかな(藤原長能)

勅撰和歌集の見どころの最大は歌風の表われだろう。これが漠然としている集は、なんとなく面白味に欠ける。これまでの七夕歌で万葉集と古今集の歌いぶりを鑑賞してきたが、新古今集もやはり新古今集といった特徴をはっきりと感じることが出来る。『袖を濡らしながら両手を合わせて掬った水の上に、牽牛と織女が逢瀬を遂げる天の川が映っている』。難しいところはひとつもなく、ただただウットリ思い入ってしまう絵画的抒情が描かれている。「袖ひぢて」といえば貫之による古今集第二番歌※が思い起こされるが、今日の歌の方が「合う(逢う)」というイメージにもピッタリだ。詠み人は藤原長能、拾遺集時代の歌人であるが、なるほど新古今にこそ相応しい一首である。

※「袖ひぢて結びし水のこほれるを春立つけふの風やとくらむ」(紀貫之)

(日めくりめく一首)

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