春秋も後の形見はなきものを氷室ぞ冬の名残なりける(覚性入道親王)

新古今集の影に隠れがちだが、俊成が編纂した千載集も一字千金の見事な歌集だ。滑稽に傾いていた勅撰集の歌風を王道たる古今調に戻し、次の新古今への道筋をつけた。全体的な評価はこうだが、子細をみるとまた面白いことに気づく、それは題の多様さだ。今日の歌もその一つ、「氷室」である。もちろん80年代にブレイクしたロックシンガーではない、冬の氷や雪を蓄えておく室つまり昔の冷蔵庫である。『夏になると春と秋の形見なんてまったくないけど、氷室は冬の名残を留めてるよね~』。すまない前言を撤回せねばならない、いつもより滑稽だネ。

(日めくりめく一首)

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