都心降雪に詠う、雪と山橘


昨日(1/22)、ひさしぶりにまとまった雪が都心に降りました。
昼ごろからポロポロと降り始めた雪は宵の口には吹雪の様相、夜になると辺りは一面の銀世界。
都会の夜の雪は、灯かりを反射して街全体を白く染めます。雪国とはまた違う雪景色に、雪国育ちの私は心躍りました。

さて、せっかく降った雪です。
ここで歌を詠まないのはもったいない! ってことで一首ひねりだしました。

「深雪ふる 里の通い路 迷ひなば 山橘の 色を訪ねよ」(うっちー)

“山橘”は、初夏に詠まれる“花橘”とは別種、葉形が橘に似ていることからその名がつきました。現在では“ヤブコウジ”または“万両(マンリョウ)”なんておめでたい名でも呼ばれています。

山橘はその小さな赤い実が愛でられ、古来から歌に詠まれてきました。
「この雪の 消残る時に いざ行かな 山橘の実の 照るも見む」(大伴家持)
「わが恋を しのびかねては あしひきの 山橘の 色に出でぬべし」(紀友則)

ちなみに小さな赤い実といえば“南天”も想起されますよね。ただ南天は樹高が2Mちかくもある一方、山橘は30cmくらいの低木。
冬、ふと足元に目をやると雪間からひっそりと赤い実をのぞかせている。
この叙景に歌人たちは心を寄せたのです。

(書き手:歌僧 内田圓学)

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