和歌の入門教室 「倒置法」

語や文節を普通の順序とは逆にする表現です、「倒置法」とは。
と、このように使います。

あまり意識していないかもしれませんが、本来日本語の普通の語順とは、主語、目的語、動詞(SOV)と並ぶのが基本です。
例えば「私は、歌を詠む」というのが通常の語順。

これをあえて崩すのが倒置法なのです。
例えば、「歌を詠む、私は(OVS)」とか「私は詠む、歌を(SVO)」という感じですね。
すると、あら不思議! 最後の語句が強調されて聞こえますよね。これが倒置法の効果です。

散文でも倒置は効果的ですが、韻文、特に短詩形式の「和歌」にとっては死活問題に関わります。
歌例を持ってご説明しましょう。

315「山里は 冬ぞさびしさ まさりける 人めも草も かれぬと思へは」(源宗于)
普通の語順は「人めも草も かれぬと思へは 山里は 冬ぞさびしさ まさりける」となります。

909「誰をかも しる人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに」(藤原興風)
こちらは「高砂の 松も昔の 友ならなくに 誰をかも しる人にせむ」が通常の語順。

倒置の歌はまだまだあります。
百人一首をざっと見渡しただけでも……
「花の色は うつりにけりな いたづらに わが身よにふる ながめせしまに」(小野小町)
「月みれば 千々に物こそ 悲しけれ わが身ひとつの 秋にはあらねど」(大江千里)
「しのぶれど 色に出にけり わが恋は 物や思ふと 人の問ふまで」(平兼盛)

と、挙げだすとキリがありませんね。和歌では倒置していない歌の方が珍しいかもしれません。

なぜこんなにも倒置された歌が多いのか?
それは和歌が「歌」だからです。

通常語順にした歌を見て感じたはずです、散文的つまり説明に長じた歌の平凡を。
しかし、歌はメロディーでありリズムです、そこにこそ美が宿るのです。そして、それを生み出すのが「倒置法」なのです。

鑑賞はもちろん詠む場合は特に、言葉の語順に注意を払ってください。
倒置によって生きも死にもするのです、和歌は。

(書き手:和歌DJうっちー)

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