むかし、としよりはこのように語った…
お前は本当におねだり上手だな。しょうがない、それでは四季に続いてちょっとだけ恋の詠み方を伝授してやろう。
だいたいな、困ったときはこの二つに頼れば間違いない。
まずは「糸」じゃ!
夏引きの「蚕の糸」とか「ささがに(蜘蛛)の糸」、これに思いを託して、絶えるとか繰りかえすとか心細なんて言ってみるんじゃ、ほかにも長く変わらないとか思いが乱れるとかな、それらしいバリエーションで詠めば簡単に恋の歌になるぞ。
そして「海」に関連するもの! こいつは本当に便利だ。
たとえば世の恨めしさを言おうと思えば「綱」が弱くなったとか絶えて会わないとも言えるし、釣りの「浮子」に譬えて身の浮き沈みを嘆いたり、満ちてくる「潮」に袖が濡れると言ってみたり、「海松布(みるめ)」に掛けて見(会い)たいと海に潜ったり、「貝」ならぬこの世の生き甲斐を拾うとか、「網の目」のごとく人目をつつみ(しのび)とか、粗末な海の道具小屋に旅寝をして網の「浮木」を枕として夢で会おうなんて、まあとにかくいくらでも言いようがあるのじゃ。
ようするに和歌なんてのは発想次第でいくらでも歌いようがあると思え。周りを見渡してみい、「竹」の憂き節とかひと節(よ)ならぬ一夜とか、「刈萱」、「朝寝髪」、「文字摺石」などにかこつけて心の乱れを表すとかいくらでもできるじゃろう。
そうそう難しく考えないこった、令和の若者よ!
としよりのひとり語りはつづく…
(聞き手:和歌DJうっちー)
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