五月雨は晴れぬと見ゆる雲間より山の色こき夕暮れの空(宗尊親王)

詠み人の宗尊親王は異例の経歴の持ち主である。後嵯峨天皇の第一皇子というやむごとなき身分でありながら、招かれて鎌倉六代将軍となった。歴史上、皇族将軍としては初めての人である。これにより何が起こったか? 鎌倉に本格的な和歌文化が始まったのである。大規模な歌会なども催され、血なまぐさい東夷に雅な貴族文化が花開いたのだ。さて宗尊親王、いろいろあって謀反の嫌疑で京へと追い返される。そもそもお飾りであったのだからやむを得ないが、歌人としては本物だ。『五月雨は晴れたようだ、雲の間から山の色が冴える夕暮れの空が見える』。宗尊親王は多様なスタイルを詠みこなす手練れだが、今日の歌などはまさに玉葉好みの仕立てだ。

(日めくりめく一首)

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