雲居より散りくる雪はひさかたの月の桂の花にやあるらむ(藤原清輔)

『雲の果てから散ってくる雪は、月にあるという桂の木の花ではあるまいか』。雪を花びらに見立て次の季節を慕うのは、伝統の域を出ないつまらぬ詠みぶりと言えよう。しかしフォービズムよろしく、狂言綺語で迫りくる御子左一派の歌にはない優しさが、この歌にはある。そう、清輔の歌にあるのは優しさだ。父顕輔に疎まれ俊成はじめとする御子左家に歌壇を追いやられても、清輔は腐ることなく伝統と自然に心を寄せて歌を詠む。定家もこの優しさに触れて、自撰の新勅撰にこの歌を採ったのだろう。

(日めくりめく一首)

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