昨日の友則に続き、百人一首にも採られた桜歌である。この歌で和歌の魅力に憑りつかれた人も多いかもしれない、なぜなら私がその一人なのだ。和歌は「詞」と「心」によって構成される、そしてこのふたつがバランスしてこそ歌は「いい歌」となりうるが、小町の歌はこれが見事に成功している。まず「詞」であるが「ふる(降る)、(経る)」と「ながめ(長雨)、(眺め)」の掛詞、二句切れの倒置、「うつりけりな」という美しい響きと、冴えに冴えている。なおかつ「心」は複雑な技巧の裏で、待ち偲んだあわれな女の詠嘆が存分に描かれている。まさに揺るぎようのないパーフェクトな歌、和歌という文芸の魅力が存分に発揮され、それを感じられる歌である。これに対抗しうるのは、おそらく定家の百人一首歌※くらいであろう。
※「来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに 焼くや 藻塩の身もこがれつつ」(藤原定家)
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