詠み人は藤原公任、幼くして優秀で後に正二位、権大納言まで昇る。ちなみに従兄弟の道長は公任の「影は踏めないが面は踏める」と豪語してその通りになった。さて今日の歌であるが皮肉たっぷりである。『澄むといってどれほどの年月も澄まない世の中だなぁ、とかく曇ることが多い秋の夜の月よ』。どう考えても月は自身の暗喩である。いくら権大納言に昇ったといえ、彼の父また祖父は関白、太政大臣であった。それと比較してしまえば物足りなさはどうにも拭えない。曇りが晴れなかった結果、公任は政治ではなく文化へと逃避したといえる。
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