趣向に富んだ歌だ。『木から木へ伝う羽風によって散る花を、いったい誰のせいだと言ってあちこちで鳴いているのだろう?』。主語はうぐいす、花を散らすのは己自身、それを知らぬ鳥の哀れを詠んだ歌である。
詠み人は素性法師、彼は古今集において選者らに次ぐ歌数を採られている。それも父である遍照に勝るとも劣らぬアイロニカルな歌ばかりだ。それは四季よりも恋歌で発揮される。『音にのみきくの白露夜はおきて昼は思ひにあへず消ぬべし』。これなど「きく」に「菊」と「聞く」を掛け、白露の縁語「置く」と「消ぬ」を巧みに詠んだ技巧的にも趣向的にも見応え十分な歌だ。
古今集に遍照と素性の親子がいなかったら、さぞかしクソ真面目でそれこそつまらぬ歌集にまとまっていたことだろう。
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