さくら散る木の下風は寒からで空にしられぬ雪ぞふりける(紀貫之)

かっこいいぜ貫之パイセン! 理知的と言われる貫之だが、その歌への表れは大きく2パターンに分かれる。ひとつが掛詞、縁語など修辞の駆使、もうひとつが対象を別のものに例える見立てであり、今回は後者が冴えわたっている。つい先日も古今集に採られた貫之の絵画的詠歌をご紹介したが、それは少々説明臭さが鼻に立った。今日の歌ももちろんそれは臭うが、こちらの方が遥かにいい。それは「空に知られぬ雪」という物語的風景が情趣を誘うのである。「寒からで」(寒くないので)ということわりがなければ、新古今歌にも負けぬ優なる歌だ。

(日めくりめく一首)

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