言わずと知れた持統天皇の百人一首歌であるが、これは新古今集の夏の一番歌でもある。昨日ご紹介したように古今集では「ほととぎす」が夏の先陣であったが、新古今になると「更衣」つまり衣替えに変わっている。ほととぎすの声を想起しづらい現代人には、新古今の方が実感に伴うかもしれない。
さて、今日の歌は夏に映える白色が清々しく、声調も美しい見事な写生歌である。持統朝といえば柿本人麻呂や高市黒人などの宮廷歌人が活躍し、歌が言霊から文学へと育まれた和歌史におけるターニングポイントとなった時代だ。持統天皇には歌の本質が見えていたのだろう。定家が平安王朝の祖、天智天皇の対として持統天皇を撰んだのも彼女が宮廷和歌の祖というような存在であり、詠歌のそのものの上手さに惹かれたのに違いない。
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