日本の春を飾る花、「梅」と「桜」。和歌において、このふたつの詠み方は似ているようでまったく違う。その端的な表れが「香り」だ、梅はこれをひとしきり詠むが、桜はほとんどそうしない。なかでも今日の歌は香りの印象がバツグンだ。『春の夜の闇はむだなことをするね。姿は隠せても、香りまで隠しきれると思ったのかい?』。もはや花の姿かたちなんでどうでもよく、匂いさえ堪能できれば十分と言わんばかり。詠み人の凡河内躬恒といえば百人一首にも採られた「初霜の置き惑わせる白菊の花※」でも分るが、当時の歌人としては五感が優れて先鋭化している。
※「心あてに折らばやおらむ初霜のをきまどはせる白菊の花」(凡河内躬恒)
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