年のうちに春はきにけりひととせを去年とやいはむ今年とやいはむ(在原元方)

初代勅撰和歌集「古今和歌集」の巻頭を飾る歌である。もしこれが歌集を象徴するその位置になければ、古今集いや古典和歌はもう少し輝きを残していたかもしれない。『まだ年内なのに、もう春が来た。この一年を去年というべきか今年といべきか』。歌の内容はいわゆる「年内立春」であるが、まずこれが新暦を使う明治以後の近現代人には親しめない。そして歌の内容、まったく無趣味ではないか! 子規でなくともこう言いたくなる※。だがそれでも、貫之達撰者はやらなければならなかった。これは宣言なのだ! 和歌(大和歌)は時の移ろいに心を寄せたものなのだと。

今日これより、新しい和歌の歴史が幕を開ける。

※「先づ古今集といふ書を取りて第一枚を開くと直に「去年こぞとやいはん今年とやいはん」といふ歌が出て来る実に呆れ返つた無趣味の歌に有之候。」(再び歌よみに与ふる書)

(日めくりめく一首)

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