印象的な写生歌に長けた式子内親王であるが、今日のような物語調の詠歌も珍しくない。ただ俊成卿女の名手と違ってあくまでも淡泊に身悶えてみせる。『決して戻りはしない過去、それを今と思うような夢まくら。花橘が匂っていたのだ』。ここでも花橘の香りは懐旧のスイッチとなっている、ただ和歌の通例で思い出るのはかつての恋人であるが、式子は昔の日々を描いている。それはきっと「ほの語らひし空」のあの日。式子の歌にはすべて、「帰りこぬ昔」への思いが横たわっているのだ。
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