千たび打つ砧の音に夢醒めてもの思ふ袖の露ぞ砕くる(式子内親王)

よみ人:式子内親王 、所収:新古今和歌集

式子内親王が詠んだ「擣衣の心」をご紹介しよう。『何度も繰り返し打つ砧の音に夢から醒めて、もの思いに濡れた袖の涙も砕ける』、昨日の宮内卿の歌と同類の趣向、やはり砧の音は女性にとって憂いの象徴であるようだ。しかし今日の方がいくらも激情的である。千たび打つ砧が露(涙)を砕く、絶望感に打ちひしがれるとはまさにこんな状態を言うのだろう。さらに重之の百人一首歌※1にあるように、「砕く」には「思い乱れる」という意味もあり、これを加味すれば半狂乱的なイメージさえ抱く。美しい写生歌と感情に任せた恋の歌※2、式子内親王には真逆の二重人格が宿っているようだ。

※1「風をいたみ岩うつ波のおのれのみ砕けてものを思ふころかな」(源重之)
※2「玉の緒よ絶えねば絶えね ながらへば忍ぶることの弱りもぞする」(式子内親王)

(日めくりめく一首)


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