五月雨の雲間の軒のホトトギス雨にかはりて声の落ちくる(慈円)

『五月雨の雲の隙間から、雨ではなくてホトトギスの声が落ちてきた』。諧謔めいているがどうだろう? 詠み人は慈円、慈円といえば多分に堅物のイメージがある。それは摂関家の筋であり天台座主というエリート、「愚管抄」を起こし後鳥羽院を戒めたというものあるが、なにより百人一首歌※の印象がそうさせる。他の坊主連中がそのくせ艶っぽい歌が多いのに、慈円だけは民に寄り添ってご立派だ。皮肉を言いたいのではない、彼のようなちゃんとした大人が庇護したから新古今も成ったというものだ。さて、であるからして今日の歌も滑稽を狙ったものではなく、思いもよらぬ体験に寄せた素直な感動であろう。採られたのは玉葉集、五月雨の絶え間を耳で捉えた感性に京極派は感嘆したのだ。

※「おほけなくうき世の民におほふかな我がたつ杣に墨染の袖」(慈円)

(日めくりめく一首)

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