はかなしやさても幾夜かゆく水に数書きわぶる鴛のひとり寝(飛鳥井雅経)

よみ人:飛鳥井雅経 、所収:新古今和歌集

山鳥や鹿にも雌雄別離の悲哀が詠まれるが、鴛の場合はその寂しさが甚大だ。『水に数を書く、なんて出来やしないことを毎晩続ける』それほどの虚しさだというのだ、鴛の独り寝は! 昨日の崇徳院に勝らずとも劣らない、孤絶の極まった歌である。詠み人は飛鳥井雅経、新古今撰者の一人であったが、他の連中に比べて政治的にも歌風的にも難なく中立であった。今日の歌も新古今好みの無常観を湛えつつ、伝統的なモチーフ※を巧みにバランスさせている。

※「行く水に数書くよりもはかなきは思はぬ人を思ふなりけり」(よみ人知らず)

(日めくりめく一首)

→「和歌と文人墨客の集い(如月の会)」2/23(日)9:50~11:50