飛びかよふ鴛の羽風の寒ければ池の氷ぞ冴えまさりける(紀友則)

今日の歌で鴛は池水を離れ、空を自由に飛び交っている。かと言って、うき(浮き、憂き)寝に決別し新たなる旅立ち(恋)に臨む! というような気分一新の歌ではない。『飛び交う鴛の羽によって生じる風が寒いので、池の氷が一段と冷え増さっている』と、冬風の寒さを表現した歌だ。肩透かしを喰らい滑稽味さえ感覚えるが、実のところ「鴛」に「憂き」の連想が固定化、つまり歌言葉に成ったのは平安も後期(正確には金葉集のころ)になってから。古典和歌といえども、一一の言葉はダイナミックに変遷しているのだ。

(日めくりめく一首)

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