なけやなけ蓬が杣のきりぎりす過ぎ行く秋はげにそ悲しき(曽禰好忠)

『鳴けや鳴け! 蓬が茂って荒れ果てた杣山のきりぎりすよ。過ぎ去って行く秋はこんなにも悲しいのだ』。「きりぎりす」という名はどうにも言葉遊びが出来なかったらしい、ほとんどの和歌では素直にその音色が詠まれている。ただ今日の歌、秋の夜長にしんみりと虫の音に聴き入るという感じではない、どうせ悲しくなるのなら、いっそのこと鳴いて鳴いて鳴きまくれ! と叫びにも似た激情が詠まれている。詠み人は曽禰好忠、おそらく自身も虫と重奏するように泣いて泣いて、行く秋に思いを寄せていたのだろう。

(日めくりめく一首)

和歌の型・基礎を学び、詠んでみよう!

オンラインで和歌の型・基本を学び、自身で詠み、月次の歌会で仲間と高めあう「歌塾」開催中!

季刊誌「和歌文芸」
令和七年春号(Amazonにて販売中)