和歌(短歌)という詩形は三十一文字、かつ詠むべき題や言葉は自主規制を設けており、現代のそれが目指す自由とは真逆の不自由極まりない表現である。そこにいかなる価値があるか? という問いは別の議論として、こういうわけだから和歌の九割九分は、誰が詠んだかわからない無個性で溢れている。でも、それでも、句の切れ間からどうしても個性がにじみ出てくる稀有な歌人がいる。例えば業平だったり和泉式部だったり、そして今日の式子内親王である。
われを忘るな! 軒端の梅に突き立てた別れの言葉、優雅な影など寸分も残さぬ緊迫感。彼女の歌には、平時にあって懐の短刀翻すような鋭さがある。
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