むかし、としよりはこのように語った…
歌づくりに困ったらのう、とりあえずはニセモノを詠んどけば間違いない。
ニセモノといっても「偽物」ではないぞ、「似物」のことじゃ。
たとえば桜を白雲に見立てるとか、散る花を雪になぞらえるとかそういうやつな。
言い出したらキリないが、梅の花を娘の着物に、草むらの露を宝石に、めでたい気持ちを鶴亀の長寿に譬えるやつ、よくあるじゃろ?
うむ、言いたいことはわかる。確かにこれらの見立ては昔っから歌に詠まれており古臭さ満点じゃ。とはいえ新しく詠みようがないしのぉ、似物は…
なんじゃ、その不満げな顔は! 勘違いしてもらっては困るぞ、わしだって似物を詠むときはな、陳腐な表現だと重々わかったうえで、しぶしぶ詠んでんだからな。
としよりのひとり語りはつづく…
(聞き手:和歌DJうっちー)
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